2018.5.2, 7: Donizetti "Lucrezia Borgia"

劇場の舞台より一段高い黒い床、背景は「Lucrezia Borgia」の電飾のある白い壁、舞台セットはそれだけなので、お金がかかってないなどと言う人もいるが、私はこの演出が大好きだ!!!

黒髪の半ズボンの男が一人で舞台に立っている。おお、よくみるといきなりのFloerz。6人の半ズボンが出てきて、寝転んだりしてポーズを取る。ここ、初演では絵的にものすごく美しかったのだが、だいぶ崩れてしまったなあ。。。

半ズボン、というか脛だけ出した七分丈なのは、少年たちだから?たわむれて殴り合ったりする。一人、顔に白塗りをしている奴がいて、これは後でスパイ(Gubetta)だとわかる。

同じ格好の合唱団がでてきて、足音をたてて踏みだし拳をあげて威勢良く歌う。よくみると顔がおじいちゃんな人もいるが、全体でみると少年たちが戦う決意をしているようで、こっちもテンションがあがる。

少年たちは退場するが、Gennaroだけ残っておもむろに床に上着をしき、横になって寝てしまう。Floerzの存在感がありすぎて、このへんの無邪気さが出せてない。。。

白い壁に仕込まれたドアがバンと開いて真っ赤なドレスのLucrezia Borgiaがバンと登場。このバンの勢いも初演よりは減っている。Gennaroに目を止め、なんて美しい寝顔なの。。。ドアの後ろにスパイが隠れている。

Gennaroが目覚めて起き上がり、転んでしまい、膝に怪我をして、なぜかシャツを脱ぐ。太っちゃいないがちょっと中年の体がびみょー・・・身の上話をすると、Lucreziaは自分の息子であることに気づいた。

友達たちがやってきて、Gennaroと一緒にいる女がLucrezia Borgiaであると罵倒するので、Lucreziaは茶色の毛皮のコートを着て退場(最終日は片袖しか入らなかった)。続いてきた合唱団もみなズボンの裾をおろし、少年から青年になったようだ。

少年たちが退場するのと入れかえに、スーツ姿の男が机を担いでやってきて、バンと音をたてて机を置く。なでつけた髪に眼鏡の秘書が椅子も二脚運んでくる。ブティック「Lucrezia Borgia」のAlfonso社長といったところ。初演と同じバスが声量あっていい。

友達にからかわれたGennaroは、オレだってBorgiaは嫌いだと、看板の「B」の字をはずして床に投げつける。友達たちは「Orgia」だーとはやし立てる。

電気屋さんに着替えた合唱団がきて、リンゴ食べたりゆるーくたわむれながら歌う。さっきのと全然雰囲気が違うのがいい。その中に電気屋に化けた秘書がいることに気づき、身ぐるみをはがして追い出す。反抗的なフェラーラ市民の読み替え。

Gennaroは捕まって後ろの椅子に座らせられ、あくびをしている。秘書がおもむろに隣に座って新聞を広げる。

黒いパンツスーツに着替えたLucrezia Borgiaがカリカリやってきて、4番目の夫であるAlfonsoに、うちの看板を傷つけた奴を捕まえて厳罰に処せと頼んでいる。

が、秘書が犯人を連れてくるとGennaroなので、一気に言うことが変わる。ていうかシャツに血がついてるし。秘書なにやってくれたの!Alfonsoは浮気相手なのではないかと誤解して、絶対に生きて返さないとLucreziaに言う。

秘書がおもむろに赤いテーブルクロスをかけ、赤ワインの瓶を二つ運んできて置き、注ぐ。GennaroとAlfonsoが乾杯をすると、一つは毒入りで苦しみ出す。Alfonsoと秘書が去った後、Lucreziaが解毒剤の瓶を渡す。最初は拒んだGennaroであったが、説得されて飲んで一命を取り留める。

休憩のち2幕。

音楽が始まる前からGennaroが一人、椅子に座って苦悩している。傍らにはLucreziaの赤いドレスがある。そしてアリア、この女性が誰であろうと愛している!

合唱団が色とりどりの海賊の格好で現れ、剣を振りかざして歌う。ここの意味がずっと謎だったのだが、中央でスーツ姿の秘書がまだ待機の指示を出しているから、暗殺者だったのね!海賊たちは後ろ向きになった椅子に座り気配を消す。

また友達がきて、Gennaroに、ネグローニ邸のパーティに一緒に行こうよー。最初は断ったGennaroであったが、幼なじみのアルトに言われて同意する。アルトは初見、悪くはないが声量が物足りない。

黒いワンピースの金髪の少女が佇んでいる。これ、ネグローニ王女!友達たちが退屈だーとかいって抱きかかえられて、気絶して、別の男に抱きしめられたり。初演はもっとあからさまだったような。

スパイがシャンパンを7つ運んでくる。みなに配るが自分は飲まない。Gennaroに彼は飲んでないと指摘されると、飲むフリをして胸ポケットにしまっていた。それを見て安心したGennaroらはみな一気に飲み干す。

また後ろのドアから黒いドレスに銀髪ストレートロングのかつらをかぶったLucrezia Borgiaがバンと登場。入れかえに同じドアからネグローニ王女が静かに退場。このドア開くと奥も白い部屋になっていて、光る仕掛けになっている。

墓は5つ用意したと高らかに歌うLucreziaに、6つ目も用意しろと叫ぶGennaro。Lucreziaは彼に気づいて一気に狼狽し、かつらを脱ぎ捨てる。また解毒剤を飲んでと頼むが、友と一緒に名誉ある死を選ぶと言われてしまう。その間、4人はおもむろに後ろ向きの椅子に座り、死んでしまったもよう。アルトもやがて後ろ向きに座る。

Gennaroが苦しみ出すので、LucreziaはあなたもBorgiaなのよ、Borgiaの息子なのよと告げるが、Gennaroはなんか言って死亡、後ろ向きに座る。

かつら片手にLucreziaの慟哭!

Loy演出、「Roberto Devereux」でもやってたけど、かつらをはずす行為は、歌手の心の楯を取り払う効果を狙ってやっているのだと思う。ほんと毎回、かつらはずした後のEdi様は壮絶。LuciaElviraAnna Bolenaも狂乱の場では技巧に走っていたところがあったから。Edi様自身もそういうLoy演出を気に入っていたはずで、もう新作やらないって言ってたのに「La straniera」やったくらい。

Loyの素舞台演出はこの後、「Don Giovanni」「Das Wunder der Heliane」へと続く。新作「Figaro」もそんな気がする!

今回は3公演。初日はFlorezがGruberovaに気をつかっている感じありありだったらしい。私が見た2日は、Gruberovaは出だしは全然声がでてなくてどうしようかと思ったが、すぐによくなって、最後の慟哭もハラハラだったけど、涙ボロボロだった。演奏もよかった。

そして今日7日は最初からちゃんと声は出ていて、そうなると演奏も合唱もさらに決まりまくる。このマイナーなオペラをこれほど多く上演している劇場は他にはないのだから。Florezも2幕冒頭のアリアでは思いっきり熱唱!でもGruberovaは疲れてしまったのか、最後の慟哭ははずしまくりでハラハラしすぎて泣けなかった。。。

数度繰り返されるカーテンコール。少なくなっても拍手をやめないコアな観客たちを制止したGruberova、「Das ist lezte Lucrezia」えーーーーー!!!

そうだろうとは思ってたけど。この演目で最後にFlorezと組むことを提案したのは一体誰なのだろう。Florezは最後に彼女と共演するためにこのロールを準備したのではなかろうか。ザルツブルグでコンサート形式でロール・デビューを果たし、万を持しての舞台だった。

Gruberovaも自分の声の衰えは自覚しているだろうから、わざわざFlorezなんかと組まなくてもよいものを。ネトレプコだったら絶対逃げるだろうな。それをむしろ好んでやるのは、この人が根っからのチャレンジャーで、またサービス精神が旺盛だからなのだろう。自分の最後の花道に、世界最高のテノールがいたら、きっとみんな喜ぶと思ったのだろう。そして自分もうれしかったに違いない。

カーテンコール中、なんどもFlorezに語りかけるGruberovaが印象的だった。Florezも実は母である女性への愛を、2幕冒頭のアリアに込めたに違いない。

この舞台が見られて本当によかった。私がLoy演出の「Lucrezia Borgia」を見るのもこれで最後。

2009年初演,2011年2014年、あと三年歌うって言ってたんだなあ。その通りになった。今回、このオペラでは初めての旦那ちゃん(Friedrich Haider)指揮だった。

STAFF & CAST


目次に戻る