それでなければタイトル「ジェンナーロ」になってたくらい。。。前半は力んで苦しそうで、後半の嘆きのアリアはさすがEdi様と思ったけど、その後の延ばした高音がすごい不協和音。声が出なくなるわけでなく、コントロールがきかなくなるという珍しい事例であった。
でもこの演出は見応えある。セットが超シンプルでそれが嫌という人もいるが、素舞台の演劇に近づけたところがいいんだよー。三回目:1、2
舞台は白い壁にLucrezia Borgiaの電飾看板のみ。床が黒くぬった台の貼り合わせなのが、素舞台感を出している。
開演前からスーツ姿の若者が次々と現れる。なぜかズボンを膝までまくりあげて少年ぽい感じ。噂話をして、喧嘩をしていると、壁に仕込んだドアがばーんと開いて、真っ赤なドレスのルクレツィア・ボルジア登場。このシーン、ドアの向こうが白く光らせてあって、ただの壁ではないのだ。
なぜかシャツを脱いで半裸になったジェンナーロはいい体してるし、ドン・アルフォンソ大公と一緒に出てきた秘書がなでつけた髪型と眼鏡でマッドな感じ。このへんがいかにもChristof Loy。
この演出、「Lucrezia Borgia」というブランドのブティックだと思うと納得がいく。いきなり赤いドレスで出てくくるのも、その後にパンツスーツでカリカリ怒ってるのも、最後に黒いドレスに白髪ロングかつらをはずすのも。セットが看板しかないのは、このブランドには看板しかないから。
連れてこられたジェンナーロは胸元が血だらけで、ワインを飲まされるが、みんなが去った後にルクレツィア・ボルジアが慌てて解毒薬の注射をぶっさす。
休憩のち後半。白い壁は下手側に徐々にスライドして、背後に何もない黒い空間が広がっている。舞台の舞台上には椅子が数脚並べられている。人々が後ろ向きに座ると舞台からいなくなったことになるという演劇表現が多用される。
ジェンナーロたちはネグローニ邸の夜会に出かけ、海賊服の人々がいっぱい現れ、椅子に座る。出された酒をのみ、一人ずつ後ろ向きに座っていく。ルクレツィア・ボルジアが解毒薬をのめと言っても飲まず、ジェンナーロも後ろ向きに座る。母の嘆き!
不協和音だったけど、感情表現はさすがだ。それでも拍手喝采送りたくなるのは、この人が大スターだからだ。