2019.2.9: Donizetti "Lucia di Lammermoor"

チケットないのにウィーン入り。発売日前に申し込んだのに。。。ウィーンは当日券あるといっても、いい席で見たかったので、ずっと不安だった。劇場についてすぐ、安い席をぼったくられて買ってしまった。でもそのあと正規のリターンのいい席が手に入ったので、それはほぼ同値で売り飛ばした。教訓:もう二度とダフ屋には手を出さない!

その後、友人のために当日券にも並んで、イタリアンにランチに行って着替えて、カフェで充電して、観光など全くせずオペラ。

ちょっと微妙な音の後すぐ幕があがると、雪がしんしんと降っている!雪の丘に立つ少女が、手前にいる兄に背を向けて去っていく。何、このドラマチックな出だし?Laurent Pelly最高傑作「I puritani」を超えるかな?

兄で領主のエンリーコが、やたら歌の上手い二番手テノールの隊長からルチアが敵と恋していることを聞き出す。雪の丘、下手には塔が立っていて、遠くにも城がある。塔がAshton家、城がRavenswoodsで、両家が対立していることを強調している?

ルチアのアリアは緊張してたのかちょっと固かったかな、うまかったけど。続いてエドガルドきて密会。雪降りしきる中、二人ともコートきて。愛を誓い、エドガルドが丘の上に去った後。下手からシャツ一枚のエドガルドが出てきて二重唱!うわー、これルチアの妄想設定なんだ、えぐいなあ。

いつしか雪は止み、背景の照明が桃色に変わると、二人の高音もはねあがり、、、涙ドボドボ。Florezの声が美しいのはわかりきってることなのだが、そこにくらえつくOlgaちゃんの声も美しかった。Florezとの二重唱をここまで美しいものにするという点で、Olga Peretyatkoにかなうソプラノは現在誰もいない。

幕が下りて上がると、下手の塔が開いたのか、紗幕で城の内部が描かれている。紗幕なので、背後の雲も、通り過ぎる人も透けてみえて、いい効果を生んでいる。これ「puritani」で使ったのと同じ手法。

下手の入り口は二重扉になっていて、そこに挟まったルチアが、偽手紙でだまされる。この象徴もいい。

人々がでてきて、ルチアが結婚の誓約書にサインをしてしまう。と、下手からエドガルドがやってきて怒り爆発!ルチアはメイドに支えられて下手の隅で小さくなっている。弁解しようと中央に戻ってきたけれど、Florez先生のあまりのお怒りに、ばったり倒れて失神。剣をぬいたFlorez先生であったが、上手の丘に去っていった。人々は動いてないのだが、上手の紗幕があがるだけで丘に逃げたように見せる。

いやー、Florez先生、うますぎ、また泣いちゃった。先日、映画館でみた「traviata」では、余裕ぶちまかしてテキトーにやってたけど、今日は容赦なく本気だしてくるなあ。ミュンヘンのGruberovaとの競演ではあんなに遠慮してたのに。Olgaちゃんに対しては容赦ないのね。。。

休憩のち2幕。

黒い洞窟みたいなとこ(荒廃したヴォルフェラグ城)にエドガルドがいて、兄やってきて決闘を申し込む。ここの歌も熱かった。兄ちゃん、今まさに初夜だ、とか言っちゃって、想像して嫉妬燃えさかるエドガルド・・・

幕が下りて上がると、舞台は真っ赤!厳密には、背後は細長い窓のあいた赤い壁で、雪の丘には赤い絨毯がしかれている。椅子が並び、結婚式の会場には黒っぽいスーツの客人たちがやってきて、踊りながら歌う。細い窓は監獄のイメージ。

絨毯前の扉が開いて、事件が起きたと。みなが扉に注目する中、下手からウェディングドレスに血をつけたルチアがフラフラとやってくる。絨毯に登ってごろごろしながら・・・狂乱?

このアリアは難しい。Olgaちゃんは一音もはずすまいと丁寧に懸命に歌っている。ので、顔が真顔。白い冠を血でピンクに染めて、狂喜の演技はやっているのだが、、、いやいや十分、いま現役のソプラノでここまで歌える人は他にはいない。Kurzakは高音届かないし、Damrauは馬だった。Lisette Oropesaはまあまあだったけど。だって若い頃はどうだったのだろう。

なのにまたブーでた。。。一人だけだけど。Edita Gruberovaの高音アレンジ版に慣れきった客かも。実はGruberovaはほとんど楽譜通りには歌っていない。すごい説得力があるので私も知らなかったし、全然オッケーなのだけど。一方のOlgaちゃんは楽譜に忠実に歌おうとしていて、この指揮者もらしい。

丘の上に立つ男、雲の位置が下がり、男が高い所にいるのがわわる。決闘はなくなって、ルチアが瀕死だと聞かされる。驚く間もなく鐘が二度鳴る。また雪が降り始める。

男は、心を決めた、もう一度ルチアに愛に行く、と歌って群衆に突っ込む。押し返されて剣を抜き、全く何のためらいもなく、自らの棟に突き刺した。

ルチアでは蛇足にしか見えないこの場面、ものすごかったなあ。二人が天国で結ばれますようにと願わずにはいられない。本日のタイトル「Edgardo di Ravenswood」、Olgaちゃんが完全に食われちゃった。

兄役の歌手もよかった。恋敵は黒人テノールで印象薄い。家庭教師のライモンドが韓国系で声はいいのかもしれんが、説得力があまりない。

Laurent Pellyの演出、物語通りスコットランドのLammermuir Hillsを舞台にした、ロミ・ジュリ強調のいい演出だった。ルチアをあどけない少女っぽくしたのが、逆にOlgaちゃんには会ってなくて、Olgaちゃんにはロンドンの強い女設定の方があってるかも。あと指揮が・・・

Florez & Peretyatkoはベストコンビ!2012, 2015, 2016ときて、2018年のホフマン@モナコは逃した。毎年やってほしいなり〜。

STAFF & CAST


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