奇跡のペルー人 Juan Diego Florez が最高難度で滅多に上演されないオペラ「マティルデ・ディ・シャブラン」を歌うから♪
フェスティバルは町中の数カ所で行われるのだが、今日の会場はAdriatic Arena、アリーナなんて大丈夫なのか?と思ったら、広いドーム内を木の壁で囲って音響をよくしてた。会場もそんなに広くはなかった。
幕があがると、舞台中央に金属でできた二重螺旋の階段が上から下まで貫いている。舞台装置はこれだけ。
客席からわらわらと人があがってくる。村人がコッラディーノの城に野菜などを持ってやってきた。が、城主は偏屈で人嫌いで、塔守ジナルドと侍医アリプランドが警告文を読んで追い返す。
次にウクレレみたいなの持った貧乏詩人イジドーロが現れ、コミカルに歌う。この歌手も結構うまい。階段を上りかけると、ジナルドの警告も間に合わず、城主コッラディーノがやってくる!
二重階段がガーッと音を立てて少し回ると、天井からタタタタッと軽快な足音がして、Juan Diego Florez が登場〜!階段を少し下りたところで立ち止まると拍手が沸き起こる。いよっ、王子!って歌舞伎みたいだ。
コッラディーノは黒皮の衣装で、階段を下りきって、腕を腰に当ててプンプンのポーズ。刀を振りかざし、イジドーロをざっくり殺そうとするのをアリプランドが制止する。イジドーロは牢屋行き。
投獄中のエドアルドが連れてこられる。コッラディーノの宿敵ライモンド・ロペスの息子で、メゾ。コッラディーノは鞭を何度も振り下ろし、「あなたが勝者だ」と言えば解放してやると言うが、断って生意気に歌う。ここは演出で鞭は直接は当たらず、エドアルドは数人の男達が囲まれて倒れ込んだ。ま、王子にそんなことさせられませんものね。コッラディーノは鎖を解くことにする。
このメゾ、拍手あびててが、声がくぐもってて私は好きじゃない。今日の出来でここだけが残念なところだった。前にロンドンでやっと時はKasarovaだったとか。みたいー。
マティルデ・ディ・シャブランの来訪が告げられる。女嫌いのコッラディーノはいそいそと逃げ帰る。マティルデは真っ赤な丸いスカートのドレスで赤い扇をヒラヒラしつつ、自分の魅力でコッラディーノを落とすと高慢に歌う。注意していたアリプランドもほだされてるし。
アルコ伯爵夫人が来訪。コッラディーノが休戦条件として婚約したおばちゃんで、マティルデと火花を散らす。アリプランドとジナルドも止められず騒ぎになると、コッラディーノがやって来る。
マティルデは伯爵夫人を無視して、コッラディーノに手にキスしろと要求。コッラディーノに鎖をもってこいと言われても動じず、逆にコッラディーノが取り乱す。アリプランドはそれを「恋の病」だといい、詩人のせいだとイジドーロが呼びつけられる。
マティルデは帰ると言い出し、コッラディーノは行かないでくれ、いや行ってしまえ!するとマティルデはコッラディーノの手をとりキス。きゃうーんとコッラディーノ陥落。ジナルドとイジドーロは階段の途中からそれを見下ろして笑っている。
ここ、合唱なのにハイC満載で、超難関なのだが、軽々と歌いこなしてた。しかもFlorezは、階段の回りをぐるぐる走り回り、手すりにぶらさがった体勢で歌う!
そこへ警鐘が鳴る。エドアルドの父ライモンドの軍が近づいてきたと。イジドーロは記録係に抜擢され、エドアルドは涙し、マティルデが同情し、コッラディーノは嫉妬する。出陣の音楽で幕!
休憩。すごかった・・・会場の大きさの割にトイレが少なくて大行列でぎりぎり。
ローマ初演時、ロッシーニは「マティルデ」で書いていたが、途中で台本を「コルラディーノ」に変えてつぎはぎし、でも劇場には「マティルデ」と告知していたので、タイトルは「マティルデ」で上演したらしい。時間がなかったので、自身の旧作からパクったり他の作家に代筆してもらったり。ナポリ上演時に改訂し、タイトルも「美女と鉄の心」に変えて上演。とくに2幕のコッラディーノのアリアがエドアルドとコッラディーノのニ重唱に置換えられたので、コッラディーノのアリアがなくなった。
そんな2幕。イジドーロが勝利を歌う。ライモンドが嘆いて歌う。エドアルドが脱走してきて歌う。1幕の丁寧な心理描写から一転、このざっくり感はなんなの!この冒頭の三曲は音楽もいまいちだし。
コッラディーノがやってきて、マティルデがエドアルドを逃がしたと聞き、キレる!城では、伯爵夫人はマティルデが逃がしたと言うし、エドアルドがマティルデに宛てた感謝状も出てくる。それでもマティルデは無実を主張するが、コッラディーノは死ねと、川に投げ込めと命じる。
イジドーロが戻ってきてマティルデの死を報告する。が、エドアルドが戻ってきて、マティルデは無実で伯爵夫人の策略だと明かす。コッラディーノは悔いて後追い自殺しようとする。
ががが、マティルデが生きていて、また高慢にやってきて、ライモンドと和解しろ、コッラディーノに、私はずっとあなたのものよ。
終盤はもうずっとマティルデのコロラトゥーラ祭りで、コッラディーノはその背後に立って腰に手を回したり、彼女が腕を開くと自分も一緒に腕を開いたり、ひたすら王子スマイル〜
私は双眼鏡追尾モードで、歌わないの?歌ってくれないの?と懇願していたが、アリアはおろか、合唱にすら参加せず、終わってしまったー
1幕とのギャップが・・・。でも今日のソプラノは声量はちょっと少ないが丁寧に歌って、終盤にむけてどんどん良くなっていたので、聞き応えあった。Olga Peretyatko、ロシアの新進ソプラノ、ポスト・ネトレプコとか言われているらしいが全然タイプが違う、大注目だ。