2016.8.14, 17: Rossini "La donna del lago"

すごい舞台だった。。。「湖上の美人」は駄作だから喜劇にしないとダメとか言ったの嘘。基本的に歌合戦なんだけど、こうもはまると物語としても成立する。勝因は恋敵マルコム(Varduhi Abrahamyan)。ここがいいと、身をひく王様に哀愁がでる。それでヒロインの最後の寸止め連発アリア(?)につながるのだ!あのアリアが物語の象徴だなんて気づかなかったヨ!

演出は最近人気のDamiano Michieletto、4本目。動く大型セットを作り込んでくるのはいいのだが、感情表現を担当する役者がずっとチョロチョロしてるのが邪魔(中世おじさんかささぎ少女白ワンピース女)。今回は、老後のエレナとマルコム。婆と爺なんで、見た目が美しくない。

それ以外は非常によかった。最初は壁で囲んだ白い小さな部屋に二人がたたずむ。傍らにフローレス王の肖像。ピンクのパジャマの婆が突然、流し台で髪を洗う。湖のほとりのアナロジー?

壁が半透明になり、背後の森と合唱団がみえる。壁が上空にあがると、さびれた邸宅があらわになる。ダグラス家か。大きな窓枠のガラスは割れ、屋内にも雑草が生い茂る。上手に階段、ベット、中央にソファー、下手に椅子。天井は壊れていて、二階の残った床には、壊れた家具が転がっている。窓の外は森で、白いドレスの女たちが一人ずつ通り過ぎる。

冒頭シーンから残った婆がベットに横になると、若かりし日のエレナが目覚める。

王様がきて、エレナに案内され、一目惚れ。二人はソファーの裏でおでこにキスしながら奈落にスライドアウト。かなりいい感じになってた!

男の合唱団が階段から提灯もって降りてくる。婆が囲まれて脅されるのが嫌な感じ(そういうのが数回あった)。婆が拾ってかぶってた王様のコートが吊されて上空に飛んでいく。

次に、エレナの元に天井から手紙がふってきて、読んで破り捨てる。ロドリーゴからか?侍女もウェディングドレスを運んでくる。

再び王様やってきて、家を物色、剣の紋章をみて娘が反乱軍の一家で首領ロドリーゴと結婚することになっていることをしり、超がっかり。

次にマルコムと爺がやってきて歌う。アルトのズボン役なんだが、うまい!!低く力強い声で愛を歌い、早い旋律は正確で軽妙。若手アメリカ人。みんなびっくりしたのか、フローレスよりすごいブラボーだった。Daniela Barcellonaもういらないじゃん。

階段からエレナと父がきたので、マルコムは階段に隠れる。父は娘にロドリーゴと結婚しろと。父がいなくなると、二入で愛の二重唱。

森から反乱軍に扮した合唱団がやってくる、もしゃロン毛の男、割とうまいと思ったら三番手のテノール。いったん退場して、上手にがらがら音立てて拳銃の束を運んでくる。 その後でてきた、同じ頭の太ったやつがロドリーゴだ。Michael Spyresなんで、ふつーにうまい。割と太めの声なのに、高音にあがると一気に細くなって声量も若干下がるのが難点といえば難点。しかしこんな太かったか? ロドリーゴはエレナと結婚する気まんまん。婆は中央でおもむろに服を脱ぎ、ウェディングドレスを着せられ、十字になって反乱軍に運ばれていった。。。

マルコムがでてきて、手紙を拾って事情をしり、ロドリーゴと決闘になりそうになったが、真っ青な王様衣装の王様が背後に現れる。似合いすぎ!と思っているうちに、暗転。

休憩のち2幕。

幕があがると王様の続き。他のみなはスローモーションで退場。一人残った王様は、あの有名アリアを歌いつつ、もきもき服をぬぎ、冒頭の茶色の狩人コートに着替える。

再びやってきたエレナにまじ告白するも、あなた誰だっけ状態。。。めげない王様は、キラキラ光る指輪(1幕で婆が王様に渡していた)を取り出し、何かあったらこれを王にみせて♪と彼女の指にはめつける。

そこへロドリーゴが階段からやってきて、オレの女になにしてんだとテノール重唱対決!ここが一番の目玉かな。邸宅の壁がするすると上空にあがる。テンションあがるー!背後には森、というか、背の高いススキ野原。二人が銃をかざし、暗転してから、バン!と火花が散る。

明転すると、エレナたちが行方不明になっている。うろたえるマルコムに侍女が事情を説明。このソプラノも妙にうまい。

三番手のテノールは侍女の恋人で、反乱軍の合唱団と戻ってくるが、王の軍隊がやってきて銃をむけられる。 暗くなり、エレナが一人できて、シャンデリアが数個ゆっくり降りてきて、王宮の広間になる。ここの転換うまい。王様がやってくると、エレナは指輪をみせて父たちの助命嘆願。 すすき野原の合唱団が王の軍のたすきをはめる。それを階段から見下ろす王様は青い王様衣装になっている。身分を打ち明けたのち、ロドリーゴは死んだけど、父は助ける。マルコムもー!と言われて、懐中時計(1幕で爺がマルコムに渡してた)をマルコムに渡す。結婚を許したもよう。

最初の小さい部屋の壁がするする降りてくる。半透明の背後に、王様、父、マルコムがみえる。エレナが一人、白いドレスを脱ぎ、ピンクのパジャマに着替えて、最初に戻る!

Michielettoはこの最初に戻る!も「泥棒かささぎ」「Cavalleria rusticana」でやってた。。。なくていいんだけど。

Juan Diego Florezの当たり役、というか、他の人にできる気がしない。最近はフレンチオペラではりあげ系が彼のブームみたいだが、ロッシーニの軽い歌い方がやっぱりいいよ〜〜死ぬほど美しいよ〜〜〜

脇役にいたるまで、いい歌手そろえたなあ。強いて言えば、父がもうちょい強く激しい方がいいのと、ヒロイン。冒頭は結構よかったし、最後のアリアはがんばったけど、中盤は声があまり出てなかった。最後のアリア、Joyce DiDonatoなんかはすんごい力ぬいて歌って、それはそれですごいのだが、今日のくらい力はいってるくらいの方が綺麗にきこえる。

指揮Michele Mariotti最高。ロンドンも彼だったが、、、慣れてるオケだからかな?自由自在に操るって感じだった。

 * * *

二回目は、老人をみないようにしたら物語に集中できてよかった。一回目は上手側だったので、背後の森が綺麗にみえ、二回目は下手側だったので、階段からの出入りがよくみえた。音の響きは、二回目の方が悪かったけど。とくに壁の向こうでの合唱にへんなエコーがかかる。ほんと、この会場の音をなんとかしてほしい。

二回目の出来自体はさらに素晴らしく、休憩明けに指揮者に対するブラボーがものすごかった。私もガンガン足ならしたさ。ロッシーニがちりばめた細かい音をほんと絶妙に拾う。ロッシーニ振らせたらいま世界一。

真面目と不真面目が表裏一体で、結果、歌合戦を物語として成立させる。今日はテノール対決のあたりなんか、物語に溶け込んでて、もう対決の感じがしなかったもの。

カーテンコールでFlorezが王様帽子をMariottiにかぶせ、投げ返してた。仲良し〜。

今日、隣にいた日本人のおじさん、1999年から毎年ペサロに通ってるらし。Florezは声が固くなったけど、ここまで歌える人は他にいないと、全くその通り。

STAFF & CAST


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