2015.8.19: Rossini "La gazza ladra" 泥棒かささぎ

春樹の小説で旋律がまわるとかあった「泥棒かささぎ」。

舞台中央にベッド、女の子が眠れないのか、そこでひとしきりはねた後、白いスティックを何かにウニ刺しにする。布が天井から降りてきて、女の子がブランコ状にして、飛び回ると、巨大な白いスティックが天井から生えてくる。

女の子を演じていたのは、「ウィリアム・テル」で虐待されるバレリーナのメインを踊ってた褐色の肌のダンサーではなかろうか。あの時の虐待が蘇って、序曲に集中できん。

巨大な白いスティックが同じ形で刺さった舞台。早くも憂鬱。

赤い合唱団がきて、なんか歌う。ファブリッツィオ家の中庭、黄色の召使いがかささぎが気になると歌い、中空でかささぎが舞う。歌は声が曇っててかなりいまいち。母は臙脂のロングドレスでやたら低い声、父は声が小さい。

白い軍服の息子ジャネットが戻り、深緑のワンピースの恋人ニネッタと再会。テノールはヒゲの小太り小男で、声は出ているが、演技ゼロ。ニネッタは声量あるが、つぶれたような声質が嫌だ。ずっと眉間に皺寄せてる顔も嫌。

ニネッタの父フェルナンドが、軍から脱走して娘に会いにくる。銀のスプーンを渡してお金に換えろと。

黒いロングコートのマトリックス(行政官)が脱走兵について尋ねるのでニネッタは嘘をつく。マトリクスがニネッタに言い寄るので、父が怒る。

スーツケースをもったカラフルなあやしげな衣装の古道具屋が再び通りかかり(冒頭にも登場した)、ニネッタが銀のスプーンを売る。古道具屋もテノールで声はいい。

ジャネットの両親が銀食器がなくなったと騒ぐ。またやってきたマトリックスがニネッタを問い詰め、古道具屋もつかまえる。ジャネットが全く動揺してないので、物語がちっとも盛り上がらない。

なぜか白いパイプが開いて傾きが変わるが、意味はわからん。

2幕、白いパイプが横積みにされている。そこへ土砂降りの雨がふって舞台は水浸し。以降、歩く度に水音が気になって仕方がない。

ニネッタはパイプの上に捕らわれているらしく、やってきたジャネットと話し、また言い寄るマトリックスを突っぱね、召使いに父に渡す金を預ける。

ファブリッツィオ家に父がやってきて事情を話す。

法廷。天井に通路があり、モーツァルトヘアの裁判官たちがずらーと並ぶ。ニネッタに死刑判決が下ったらしい。父がのこのこやってきて事情を説明するが、お前の罪は消えないし。でも父の歌は非常によかった。

ジャネットの母が一人でアリア。この低い声はコントラルトだろうか?(いやメゾ)

召使いが金を届けると、かささぎがやってきて、銀のスプーンがみつかる。マトリックスの家来たちが数名、重厚を一斉にかささぎに向けたところで、夢オチ!奈落からベットが出てきて女の子が目覚める。

残念。冒頭から夢オチであることがわかってしまって見る気が失せた。1幕はソプラノが出ずっぱりだが、声が嫌でずっと不快だった(2回目で前回も嫌いだった)。席も悪かった、安くない席なのに後ろの方で人の頭越しにしか舞台がみえない。

いい演目のはずなのに、解釈が間違っている。これって喜劇だろ、シリアスにやってどうする!そもそもこの父、娘会いたさに脱走してきたのに逃走資金を要求して娘を窮地に陥れたり、超迷惑な、どう考えてもギャグキャラだろ。それが終盤でいい歌を披露するからいいんじゃないか。銀食器ごときで恋人を信じられなくなるジャネットもギャグキャラ。疑ったり、謝ったり、全力でオタオタしてくれないと。ヒロインもこんな太い声の怒り顔じゃなくて、マヌケな可愛いお嬢さんじゃないと。百歩譲ってマトリックスはギャグとして、あとのキャラクターが全部間違い。

それから、舞台上にかささぎ役がほぼずっと出ている(2幕はパイプの上の方に座ってる)のもロッシーニの意図違い。最後にかささぎが犯人だ!となったところで、そういえば冒頭でかささぎ鳴いてたよね、と想い出す仕掛けのはず。

加えて、指揮も昨日と同じDonato Renzetti、妙にとろくなるのが眠い。で、春樹がまわると言ってた旋律はどれ?

ペサロ最低作品に決定。2007年ヴェローナとの共同製作。

STAFF & CAST


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