2016.3.20: Mussorgsky "Khovanshchina" @Amsterdam

3月は、クーラのPagliacci(3/23,26)にするか、バルトリのLe comte Oryもいいかも、とアムステルダムの動画をみた瞬間に「ホヴァンシチナ」日帰りを決めてしまった。近いのに航空券高くてちょっと悩んだけど。。。

まだざわつく場内で、有名だという前奏曲に集中しようとしていると、幕があがり、なんか中世のロシアっぽい雰囲気の民衆がストップモーションで止まっている。 この一瞬でもう物語がバンバンきて、泣いてしまった。開幕一秒。「Lucrezia Borgia」も「Ariadne auf Naxos」も開幕3分で泣いたけど記録更新。

子供がいたり、うなだれていたり。衣装は赤とか青とか黄色とかあるが、色とりどりという感じではなく、揃ってもいない。背景はLoy恒例の真っ白な壁。中央にモスクワの赤の広場を描いた大きな絵。群衆はすっと退場し、上着を脱ぐと現代の服になっている。これも「Falstaff」の手法。

群衆が去った後、木の薄い台座の上で、バリトンがテノールに手紙を書かせる。字幕みててもわからなかったが、貴族シャクロヴィートゥイと代書屋であった。ホヴァンスキ公が銃兵隊を使って息子アンドレイを皇位につけようとしていると。途中、女を誘拐する集団が通り過ぎて、代書屋は嫌だと言っていた。

広場の絵は徐々にスライドしていつのまにか消えて黒い穴がぽっかりあいている。

民衆が看板もってやってきて、何が書いてあるのか、代書屋に読ませようとする。代書屋は、内容がやばいので、なかなか読まないが、椅子ごと台座を持ち上げられて脅される。しぶしぶ読むと、銃兵隊が反対派の大貴族に正義を下した=殺したと。民衆は「母国ロシア」と歌う。

銃兵隊が群衆をかき分けると、奥からもっとうまいバリトンが出てくる。これがホヴァンスキ公であった。毛皮のロングコートきてる。我々は正義を成し遂げた、とか言ってたらしい。

みなが去った後、青いスーツの小男が赤っぽいワンピの巨乳女を追いかけて出てくる。息子アンドレイと彼に父を殺され婚約者を追放された女エンマ、殺せと逃げる。それを奥でアンドレイの元恋人マルファが見ていたが、ついに止めに入る。

Anita Rachvelishviliはうまいけど、すんごいブスでずんぐりデブなんだな。。。彼女のカルメンはさすがに見られなかった。この役は振られて邪険にされるのわかる。

ホヴァンスキ公と銃兵隊が戻り、エンマを見つけて声をかける。彼女をめぐってアンドレイと一触即発になったのはわからんかった。古儀式派教徒のリーダーであるドシフェイがやってきて止め、マルファにエンマを送り届けろと。

明転のち、2幕。穴がなくなって真っ白な壁。ちょいイケメンのテノール・ゴリーツィン公が手紙を読んでいる。実権を握る皇女ソフィアの愛人らしく納得。マルファがきて、不吉な予言をするので、彼女が帰った後に殺せと命じる。

ホヴァンスキ公がきて話し、実は身分の高いドシフェイも加わる。このへんのオヤジトークはちと眠かった。マルファが殺されそうになった!とまた駆け込んできて目が覚めた。ゴリーツィン公がオヤジ二人に言い訳をする。シャクロヴィートゥイがきて、皇帝がホヴァンスキ公の謀反を疑っていると。

休憩。

壁は黒になっている。赤いドレスのマルファがエンマを抱いたり、寝転んだり、ナイフつきつけたりして歌う。さすがうまいけど、ちょっと声量おさえめ?黄色いガウンを羽織った狂信的な老婆スサンナが、欲を断ち切ってないと責めて歌う。こっちの方が迫力あった。

老婆はやってきたドシフェイに諭されるも聞き入れないので追い出された。ドシフェイにこれでいいかと言われたマルファは、アンドレイと炎に焼かれるとかまだ言ってる。エンマはおもむろに後ずさりし、後ろの方で銃兵隊に目をつけられたりしている。銃兵隊の一人が妙にイケメン。

赤のコートきてるのが銃兵隊なのであった。奥からじわじわ前に出てきて死んだ馬(これは最初から最後まで舞台上にある)に寄り添って休んだりしていたが、民衆の男達もぞろぞろ出てくると、盛り上がって歌う。色とりどりのミニのドレス来た民衆の女たちも出てきて、男に対抗して歌う。若い銃兵隊員クーシカは、女装してからかって歌う。ちょっとイケメン。

盛り上がるとやっぱり男女がくんずほぐれつ、になったところで、代書屋が駆け込んでくる。皇帝の外人部隊に襲撃されたと。狼狽する人々が「父上」に祈ると、ホヴァンスキ公が登場。ふつーのスーツ姿だ。でも出陣しない、時を待てと。がっかりする民衆、クーシカは膝をついて号泣してた。

3幕はすごいよかったなあ!

休憩。

白の壁で黒い空間にはラメラメの紐カーテンが掛かっている。ホヴァンスキ公がふつーの椅子で偉そうにしてて、下手の女たちが励まそうとしている。クーシカも紺の上着をまたまとい、心配そうにちょろちょろしている。あと黒タキの、アジア系の小太りの召使いがいた。

ホヴァンスキ公がペルシャ奴隷を呼べというと、金髪のミニドレスの女が数人でてきて踊る。ダンサーだった。布をかぶって登場した最後の女は、背が高く細身で、ホヴァンスキ公にまたがるが、服をぬがされると実は男!なにやってんのよLoyさん。

そこへ黒服のシャクロヴィートゥイがやってきて、皇女ソフィアがホヴァンスキ公に公務に戻って欲しいと言っていると。得意げに戻る準備をするホヴァンスキ公であったが、シャクロヴィートゥイが連れてきた小さな女の子に後ろから首をぐさっ!!!女の子は小さなハンドバッグにナイフを隠し持っていたのであった。もうなにやってくれんのよLoyさん!

えっえっ主人公死んじゃったの?とびびっている間に明転おわり。

再び教会で、ドシフェイとマルファが話している。アンドレイと逃げろとか、前と同じように愛せとか。やってきたアンドレイは、まだエンマ!とか言ってて、マルファが笑って、彼女はドイツの婚約者の元に返ったし、あんたの父殺されたし、あんたも追われる身よ?でも信じないアンドレイはラッパを鳴らして銃兵隊を呼べと命じる。

クーシカは最初からでてたラッパの人だったのね!鳴らしても誰も来ない。また鳴らすと、半裸で囚われの銃兵隊がやってくる。アンドレイはびびって、マルファ助けて〜

皇帝軍は赤いコートに立派な帽子をかぶっている。同時に女たちもでてきて、銃兵隊に「No mercy!」とかいってたので、寝返ったのかと思ったが、命乞いをしてたの?あらすじによると、銃兵隊は特赦になったらしい。

マルファが上手から蝋燭をもって登場。照明で下の方がうっすら赤くなっている。火かと思ったが夕日だったもよう。続いてドシフェイが信徒たちも蝋燭をもってきて舞台前面に並べる。アンドレイがまたきて、エンマ〜とか言っている。懲りない奴だ。マルファは二人の愛を想い出してと歌う。力ためてたのか終盤はすごくよかった。高音は声量が落ちるが、低い声はものすごい迫力ある。

信徒達が一歩前に出ると、幕がぱらっと下りてきて深い森の雪景色。森に逃げたのか。その後の合唱もすごかった。信徒達は倒れたわけでも何でもなかったが、自決した感じがした。

幕が下りる。蝋燭の頬だけがゆらめく。美しい。

そしてまた幕があがると、最初の赤の広場のシーン!涙だらーーー。現代服の人々が上着やドレスをゆっくり着て、最初と全く同じストップモーションに戻る。中央にいたのはドシフェイであった。下手の荷車にいたのが流刑地に運ばれるホヴァンスキ公か。

この最初に戻る演出は「ドン・ジョバンニ」でもやってたが、ロシア革命まで変革は訪れないという意味で今日のは重厚。

カーテンコール、最終日ということもあるのかもしれないが、一階席は全員総立ちのスタンディングオベーションだった。私ももちろん速攻で立った。挨拶の最後はマルファであった。彼女が歌う終盤、すすり泣きの声がきこえてきた。私はこの幕が下りてから、だーーーっと泣いていた。

Christof Loyにまたやられた。彼の素舞台の定番演出で、今回も大道具なしかと若干がっかりしたものの、このドラマを素舞台で歌手と合唱の演技だけで紡げる演出家がどこにいる?無名の歌手達の荒削りな歌もよかった。洗練されたTerfel & Papanoの「ボリス・ゴドゥノフ」に圧勝。ほんとにオペラは演出家の時代だ。

あと宣伝動画のスターウォーズばりに剣を交えるおやじ二人にもやられたわ〜。そんなんやらんだろとは思ったけど!

ムゾルグスキーいい。この遺作は、リムスキー=コルサコフが原作を台無しにした後、ストラヴィンスキーが戻して、ショスタコーヴィチが対称化した版。

STAFF & CAST


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