演出家Katie Mitchell、WNOの旅公演で二回みたことあり(1、2)、どちらも演劇的で丁寧な作りだと思ったのだが、あれはだいぶ昔の作品。
この新作はバリバリのフェミニスト!てかレズ?男への憎悪に尽きる。そんなんやりたいならよそでやってくれ。ここはオペラ座、綺麗なものみて、物語に感動して、楽しむところ。
ルチアの語られていない物語を補完!と銘打った演出は、舞台を二つに割っての二次元中継。ルチアが恋人と抱き合って、妊娠して、無理矢理結婚させられた男を刺し殺して、流産して、自殺する。実の兄含む男達はその隣で地図を広げ、国盗りのことだけを考えている。
1幕、下手は先祖の墓、兄と三番手テノール(隊長ノルマンノ)が話す。上手はルチアのクローゼット、召使いと二人で男装に着替える。のち、下手でルチアと恋人エドガルドが逢い引き、思いっきり床で抱き合う。このテノールは劣化Kaufmann、髭面で太い声でバリトンかと思った。高音になると裏声しかでない。
2幕、下手はベットルーム、上手のバスルームに続く。ルチアがトイレに駆け込み嘔吐。女中が風呂をためる。兄と家庭教師のライモンドがきて、ルチアをアルトゥーロと結婚するよう説得。
続いて、下手のクローゼットでルチアが着替え、上手の広間に結婚式の準備がなされる。ルチアが婚姻届けにサインを押されたところで、エドガルド登場。テーブルクロスをひっぱり食器ガチャーのお約束。
3幕、上手はエドガルドの書斎。エンリーコがやってきて決闘を申し込む。下手はまたベットルームで、ルチアがアルトゥーロにまたがり、手をしばり、目隠しをして、喜んだところで、ナイフでグサ。隠れてた女中も枕を顔に押し当てる。それでも死にきれず、床に逃げたところでまたグサ。。。長い。
続いて、上手では兄たちがビリヤードをやっている。下手ではルチアは腹を痛がり、血みどろで流産。血のついたネグリジェのままビリヤード台に這い上がり、エドガルドの亡霊と話す。気が狂って奥にきえたかと思いきや、下手のベットルームに出てきて、まだ騒いでる。
また上手はバスルームになって、トイレに座って女中が風呂をためるのを待つ。女中が去ると。風呂に恋人からの手紙をばらまき、ネグリジェのまま湯につかり、手首切って、絶命。下手はまた先祖の墓場で、兄たちが、やってきたエドガルドにルチアの死を告げる。エドガルドはバスルームにやってきて、血みどろのバスタブの脇で自殺。
こんなのでも降板せずやり遂げたDiana Damrauがむしろ偉い。まあ、ロンドンでこのロールやりたかったんだろうけど。出だしはやっぱり馬だったが、狂乱の場はだいぶ落ち着いて丁寧で、ミュンヘンの時よりははるかによかった。
彼女は元々声量なくて、丁寧で音もとれてるけど高音になるほど声が小さくなるのが難点で、最近、太って、声量もでてきてよかったなあと思っていたのだが、また元に戻ってた。こんなんでブラボーでるのが残念。Edita Gruberovaはロンドンで歌ってないんだね。。。
ちなみに、Edi様のルチアは最初からはかない乙女で、兄と恋人のはざまで狂死しちゃうのが哀れで、美しかった。バルセロナのFlorezのエドガルド、結婚証明書を見せられた時の怒りはすさまじく、ルチアが狂死しちゃう説得力があった。ルチアに語られていない物語なんてない。グロすぎて視覚的に語れない物語を、超絶なアリアに語らせているんじゃないか。むしろ明るめな伴奏と合唱にのせて。
ルチアが台無し。後半戦のAleksandra Kurzakがどれくらい歌えるのか見てはみたいけど、またこの演出みるのはつらいなあ。。。