舞台には大がかりなセットでがっちり家が組んである。ミュンヘンではよくみるが、ロンドンではオープンスペースになってることが多い。上手の大部分がメインの部屋で下手にドアと廊下がある。場面毎に家具が変わり、ご丁寧に壁紙まで貼り替えられる。これもミュンヘンぽく懐かしい。
プロローグ。ホフマン宅に恋人ステラが来て去り、恋敵の上院議員リンドルフが来て去る。横でちょろちょろしてるメゾがホフマンのミューズであり、親友のニクラウスでもある。
場面変わって、机の配置が変わり、酒場になる。若者たちがわらわら出てきて机にのって大合唱。ホフマンがやってきて、彼の恋愛遍歴をきくことに。以降、三人の学生がすべての場面で聞き手として立っている。
幕がおりて、映像のパイプから煙がもくもくあがって浮かび上がった文字は「オランピア」。
同じ部屋だが、壁紙が変わって、へんな衣装の人形師スパランツァーニ夫妻の家。奥のカーテンで隠されたベッドに横たわるのは、水色ワンピースをきた、自動人形のオランピア。原色いっぱいの衣装のだささが、またミュンヘンぽくて懐かしい〜
ホフマンがやってきて、恋に落ちる。コッペリウスがやってきて、魔法の眼鏡を売りつけると、普通の人間に見えるらしい。
舞台の中央の細長い台に座ったオランピアは、下半身は人形で、上半身だけ出したソプラノが、コロラトゥーラ満載のアリアを歌う。Georgia Jarmanは知らなかったが、かなり歌えていた。
ホフマンは愛を打ち明けて、オランピアとダンスをする。が、狂ったコッペリウスがオランピアを壊してしまい、絶望。面白かった〜
休憩のち、パイプの煙が「アントニア」。
同じソプラノが、今度は白いドレスで清楚に歌っている。病弱なアントニア、父クレスペルに、母も歌いすぎて死んだので、歌うなと言われる。アントニアが中央のドアの奥に消えると、その奥が黄色の光で輝いていた。
恋人のホフマンがやってきても、父はアントニアに会わせないが、開いた扉からは照明でつくられた黄色の光の魂がでてきて歌に合わせて徘徊する。ここの演出がおどろおどろしくてよい。
医者のミラクル博士がやってくる。アントニアの母が死んだ日にも来ていた人物で、父は追い返そうとするが、自分が見ないと死ぬとかなんとか言われる。
アントニアは閉じこもって、部屋の中央のピアノをひいている。楽譜をめくると、ミラクル博士の顔が出てきて歌え歌えと歌う。上手からはバイオリンを持った黒服の男達が出てくる。姿のない母の歌声が響く。
アントニアは、積まれた本の台にあげられ、歌いながら果てる。やってきたホフマンが彼女を抱いて絶望。
面白いのは一幕だけだと思っていたが、二幕も緊張感があってよかった!
休憩のち、パイプの煙が「ジュリエッタ」。
部屋は照明で薄紫色に照らされ、大きなベットが置いてある。中央に大きな回転する円形の鏡。赤紫のロングドレスの娼婦ジュリエッタに誘われた男たちが、鏡を押してぐるっと回ると、影を取られる。鏡の裏側には、俳優の姿も映らなくなっている。取られた影なのか、黒い四つ足の生き物が徘徊している。戸棚には、黄色っぽい怪しげな液体の瓶が並んでいる。
悪魔ダペルトゥットが、ジュリエッタに宝石をちらつかせ、もっと影を要求する。
飲み屋でカードゲームをしているホフマンらの所にジュリエッタがやってくる。ホフマンを誘い出し、彼も影を渡してしまう。先に影をとらえたシュレーミルがやってきて、ホフマンと決闘になるが、シュレーミルが刺されて死亡。
ニクラウスが慌ててホフマンをまた鏡に通して、影を取り戻す。
エピローグ。最初の居酒屋で若者達が歌っている。ステラとリンドルフの記事をみてなんかいっている。
ホフマンが一人でいる部屋をステラが訪れるが、入らずに去る。
オペラは男女の三角関係や二組の男女の入れ替えを全幕を通じてどたばたとやるケースがほとんどだが、こういう短編オムニバスは珍しく、面白い。全幕を通じて残る哀愁が心地よい。ヒロイン(と悪役)は違う歌手がやることが多いらしいが、今回のように全幕を同じ歌手がやる方が、なおよい。今回のヒロインGeorgia Jarmanは全幕違う衣装で違うキャラをちゃんと演じ分けていた。「ホフマン物語」は何度もみたい、一番好きな作品かも。
今回は歌手も悪くなかった。ENOはスター歌手がでるのはまれで、無名な人が多いが。ホフマン役のテノールは、のびる声で歌はかなりよかったんだが、チビで小太りで、そりゃふられまくるよ、という感じだった。Barry Banksはパスクワーレ甥とミトリダーテ王で見てたのね。
演出Richard Jonesは「The Gambler」の人か!あれも演劇的でよかったんだよなあ。注目。