上手にテーブルが数セットある旅館。背後の壁がスライドでして開いて、タキシード姿の二人の紳士と三人の娼婦が来て、テーブルとソファーでめっちゃからんでいる。。。ドアの向こうの民衆が全部みたいとはやしたてる。五人は上手奥のテーブルに座る。紺ジャケットに赤パンツのユニフォームの兵士三人がやってきて、別のテーブルに座る。
灰色のロングスカートをはいた若い女マノンが舞台中央に現れる。すごい小柄なLisette Oropesaだー。背の高い兵士が従兄レスコーで、言い寄られている。彼がカジノに行ってしまい一人になると、紳士の一人の金持ちブレティニがセクハラする。兵士たちもセクハラする。彼らがいなくなった後、下手のベンチでボストンバックを開けると白の綺麗なドレスが入っていて、自分の服をぬぎ、夢だと語る。
ようやくデ・グリューが登場。地味なスーツ姿だが、Benjamin Bernheimは華があるー。マノンに一目惚れし、声をかけ、キスは寸止め、従兄弟が戻るのを待たずに駆け落ち!後できた従兄弟が慌てて追いかける。
暗転のち2幕。上手奥にベット、マノンとデ・グリューが抱き合って寝ている。上手脇、椅子の上に乗った鏡と、下手中央にテーブルと椅子が一つずつの質素なパリのアパート。デ・グリューが脱いで白いシャツを着る。従兄が金持ち紳士と二人できて、デ・グリューを責め、金持ち紳士はマノンにダイヤのネックレスと渡して贅沢させると耳打ちする。
デ・グリューが仕事に行き、マノンは鏡の前の華をみて一人泣く。デ・グリューが戻り、どうしたのかと声をかえるも、食事はできていると。デ・グリューは鏡をどけて椅子をテーブルに運び、将来の夢を語る。と、誰かがきて、マノンが来ないでとつぶやくも、二人は別れさせられる。
暗転のち3幕。カジノ、中央のテーブルに男が二人、娼婦たちや数人も囲んでいる。白いドレスにダイヤのネックレスをつけたマノンが金持ち紳士と連れ立ってやってくる。シャンパン片手に長いアリア、非常に丁寧で完璧で、途中で二回もブラバーが入った。その脇を茶のガウンをきて顔面蒼白のデ・グリューが通り過ぎ、老婆と抱き合う。
ここまでDamianoらしからぬ黒子なしで忠実に物語をすすめていると思っていたが!
デ・グリューの父がきて、息子はSaint sulpice教会にいると。それを聞いたマノンが後で確認をする。バレエが始まり、宝石を与えられたバレリーナが男と別れる場面、マノンが自分のことと思い飛び出していく。
暗くなってもなかなか始まらない。休憩のち3幕2場はSaint sulpice教会。舞台奥に祭壇があり、黒い服の女たちがデ・グリューを見ようと覗き込んでいる。枢機卿がでてくると祈るフリをする。黒い神父服に赤いスカーフのデ・グリューがきて、ドアが締まり、元いた小さなアパートになる。上手に祭壇があり、祈る。
そこへマノンがきて、愛してるでしょと口説き、最初は拒んでいたデ・グリューであったが、愛していると完落ち!こういう甘いBBは天下一品。舞台奥の像が人間になっていて、白い服を脱いで全裸になった!
4幕、またカジノ、レスコーが勝っている。脇でからんでいるのに男同士のペアが二組。真っ赤なドレスのマノンが臙脂のタキシードのデ・グリューがとやってくる。レスコーと三人でソファーに座り、レスコーがマノンの足に手を置きいちゃいちゃするので、デ・グリューがいたたまれずに立ち上がる。
もう一人の紳士(大臣ギヨー)が賭博勝負を挑み、マノンもやれやれと。断っていたレスコーだが、プライドを傷つけられ、勝負を受けることに。勝っていたが、警察が乗り込んできて、二人とも逮捕されてしまう。
5幕、港。島送りになったマノンを、レスコーが金を渡して救い出し、デ・グリューと再会。すっかり体を壊したマノンは二人で逃げることもできず、「これがマノンの物語」とつぶやいて衰弱死する。嘆くBB、これも天下一品!
舞台が不調、壁が開いて代わりに合唱団が二人を囲み、鏡の破片で照らし出すというDamianoマジックだったはずだが不発だった。
オペラは作曲家の時代から歌手の時代になり、21世紀になって演出家の時代になっていたのだが、歌えて芝居もできる演者の時代になったのだなあと思った。Lisette OropesaとBenjamin Bernheimはその筆頭にいる。高音も確実に歌えるだけでなく、情緒が満載。情緒といえばKaufmannだったが、あの人は省エネでおいしいところしかがんばらない。高音はFlorezとかの方がうまいけど、コミカル演技やりすぎてシリアスでも笑ってしまう。
今日の二人はマノンの世界観を最初から最後まで見事に表現していた。マジックなくても問題なかった。3月にみた「ウェルテル」と対になっているのもよい。黒子少なめでマジックなかったおかげで、Loy演出にも似ていた。
マスネの「マノン」はロンドンで見たのが最初でネトコ様のどピンクのドレスで若いグリゴーロくんを手玉にとっていた。ウィーンでみたのはFlorezの神父さんがコントだった。