中央に大きめのドアのある部屋。曇りガラスに十字が描かれている。
女が上手の椅子に座って本を読む。靴をぬいで足をもみ、ちょっとリラックスした感じ。緑スカートの妹がきて、足元に座る。
子供たちが出てきて下手のダイニングテーブルに座る。スーツの男が歌を教える。女は部屋の奥に行ってパーティの準備を手伝っている。男二人シュミットとジョアンが出てきて冗談を言う。青のスーツに黄色のシャツで上手からやってきたのがウェルテル、ズボンの丈が短めなのが若く見える。
スーツの父がウェルテルに水色ドレスの娘シャルロットを紹介し、二人で出かけていく。
別のスーツの男アルベールがきて、妹ソフィーを問い詰める。婚約者で、シャルロットはどうしたと。ソフィーは壁とテーブルに挟まれて後退りしながら答える。
ウェルテルは最初から押しまくってて、シャルロットにキスしようとしてよけられたり。いいところでドアからソフィーが出てきて遮られる。ソフィーはウェルテルを見つめていて片思いしている。シャルロットがアルベールが許嫁であることを伝えると絶望する。
2幕。教会で牧師の金婚式でなく、自宅でパーティ。ドアの奥にテーブルが飾られている。招待客が数人やってくる。若い男女のカップルがきて、激しくいちゃいちゃしている。シャルロットは水色のワンピースにカーデガンで、アルベールが声をかけても目をそらしていなくなる。アルベールは彼女の心がないことを感じでいる。
灰がかった青のスーツのウェルテルがやってくる。ズボンの丈は長くなっている。アルベールと話し、ソフィーがお前を好きだと言われるが動じない。
二人きりになったところで、ウェルテルはシャルロットの肩をつかみ、諦められないと迫る。シャルロットはドアの奥に逃げて両手でドアを閉める。二人の世界が別れた。
いちゃいちゃしてたカップルが別れて、女が一人で帰り、男が冒頭の男二人と酒を飲む。
休憩のち3幕。ドアの奥にクリスマスツリーがある、はず。前半は空席が多く、いい席で見られたのだが、後半は追い出された下手端だったので、ドアの奥は全く見えず残念。
赤いドレスに茶のオーバーをきたシャルロットが、ウェルテルからの手紙を読んでいる。黒ドレスで大人になったソフィーが食事に呼びに来て、姉の気持ちに気づく。シャルロットは先に妹を行かせる。ウェルテルはもう二度と来ないと言い、シャルロットはクリスマスに来てと言った・・・
ウェルテルはきた。黒タキでかっこいい。
みんな待ってたわというシャルロットに君もかと。この家は変わってないでしょうと話すと、ウェルテルはピストルの入った箱を見つける。本を見せながらおもむろに箱を彼から引き離すシャルロット。あなたが訳しかけた詩が・・・
スイッチが入ってしまったウェルテルは「どうして僕を目覚めさせるんだ、春の吐息よ」とアリアを歌い始める。彼は立って歌っていて、足元にうずくまるシャルロットが切ない。
ここ、椅子に座ってアンニュイな演出が多いが、ウェルテルはもういっちゃってるのである。シャルロットは彼の狂気を察している。
ウェルテルはもう止まることなく、シャルロットに熱い口づけをする。初めての口づけ。彼女の口紅がついた頬のまま、愛していると、もう後悔はないと。ウェルテルはドアの向こうに行き、十字ごしに見える彼の姿を追うシャルロット。
そこへアルベールが入ってくる。まじ修羅場。何をしていると聞かれ、シャルロットはポケットから手紙を出して投げつけ、アルベールは椅子に座り、一つ一つを読んでいく。手紙に「拳銃を貸してくれ」とあったので、拳銃を渡せと言う。
そのまま銃声がして、ソフィーもきて、奥から血を流したウェルテルが出てきて、シャルロットに抱かれる。奥から子供たちの歌声が聞こえる。
山小屋いかないんだ・・・。原文は書斎だが。傍らにアルベールも座っているし、ようやく事情を理解したソフィーも横を向いて立っている。
ウェルテルは最後の力をふりしぼって立ち上がったがまた倒れ込み、「道端か寂しい谷間にお墓を作ってほしい、ある女性が密かに訪ねてくれた」と息絶える。
この会話を聞いてしまったアルベールはどうなる。シャルロットに逃げ道が一切残されないまま、子供たちの歌がきこえてくる。
* * *
最後のシーンの新解釈にはあんぐり。今日は最初から何度も泣いていたが。残酷で美しい・・・
カーテンコールでLoyら演出陣も出てきたが、ブーする観客がいてわけわからん。セットが変わらなかったから?細かい演出で物語を完璧に繋いでいたというのに。こっちは大声でブラボーだ。
まさに正解、これ以上のウェルテルを見ることはもうないであろう。Florezのウェルテルがいいと何度も見て思ってたんだけど。美しいフランス語の響き。何より、Loyと相当作り上げたであろう感情の起伏。
Benjamin Bernheimがこんな演技できるなんて知らなかった。こんな演技できるなら、これからも何度もいろいろ見たい。
前から結構みてるんだけど、開眼したのはロンドンのtraviata。2013年の「La straniera」からだから、Loy常連といってもいい。声量もでてきたし、オリンピックでオーラも出てきたので、ポスト・アラーニャとして、仏語オペラを席巻してくれるであろう。