2017.9.13: Verdi "La forza del destino" @Amsterdam

Christof Loy演出、Michelle Mariotti指揮、この二人が組んだことってあったのかなあ。ヴェルディの「運命の力」と演目は微妙だが、行くしかない。

幕があがると少し汚れた白い壁の家、中央にテーブルがあり、青緑色のワンピースの少女が同じ年頃の少年二人と座っている。少年一人はずっと赤いヨーヨーをやっている。ここで音楽が始まる。開始5秒で泣いた、Mariottiの静かな暗い音が完璧で。

幕が一度おり、再びあがると、少女はテーブルにのり、男の子の一人の膝枕をしている。ピエタのポーズ。もう一人の男の子は少し離れてそれを見ている。

また幕がおり、再びあがると、少女は少し大きくなっていて、男の子に押し倒される。もう一人の男の子が父親を連れてくると、二人は引きはがされる。少年がまた赤いヨーヨーをやっている。

この間も音楽はよかったが、舞台で展開される「運命の力」が衝撃的であまり集中できなかった。

前奏が終わり、幕があがると、同じ青緑色のワンピースをきた女性がいる。当然、これがレオノーラである。Eva-Maria Westbroek、さすが迫力ある。その白い部屋は上手に箪笥、下手にデスク、天井は高くシャンデリアがかかっている。テーブルには水色マントのマリア像。

下手の大きな窓に突然、黒ずくめの男アルヴァーロが立ち、彼女を迎えにくる。小太りだが予想外にいい声だ。外に馬を待たせてあると。黒人系の女中と執事は協力的だ。レオノーラが父にもう一度会ってからなどとためらっている間に、父がきてしまう。レオノーラは青いドレスを脱ぎ、その下のピンクのドレスを脱ぎ、茶色のズボンをはいていた。

アルヴァーロが床に置いた拳銃が暴発して父に当たってしまう。この瞬間は映像として背後の壁に大きく映し出されていた。だから家が大きくて白いのね。みな愕然としたところへ、民衆がなだれきて幕が下りる。

民衆が椅子とかもってなだれきたことにこっちも驚いているとまた幕があがる。2幕。同じ民衆が同じ部屋で同じテーブルを囲んでいるが様子が違う。細長いテーブルが横向きだったが縦向きになっているし。中心にいるのは別のスーツ姿の男、レオノーラの兄ドン・カルロだ。

臙脂色のパンツスーツのメゾ(ジプシー)がテーブルにあがり、イタリア戦線に参加してドイツと戦えとあおっている。歌はぎりぎりだが、演出が非常にいいので盛り上がる。男ダンサーが数名、ウェディングドレスみたいなスカートを来た女が数人いるが、一人男がまざっているぞー。

急に巡礼の一団が通りかかり、みなが祈りを捧げると、下手の窓がスライドして十字架のキリスト像が現れる。

ドン・カルロが友人の話として自らの身の上を語る。その一部始終を男装したレオノーラがずっと見ていた。

また幕がおりてあがると、同じ部屋だがテーブルが横向きになっていて、下手のデスクで修道士がぶつぶついっている。男装のレオノーラがスーツ姿の神父に救いを求めると、修道院にいけと、いや洞窟に籠もりたいと。修道士たちがわらわら出てきて、舞台中央でレオノーラを犯してた!?他の人たちは誰も止めない。。。シュールだ。これで「祝福された」のね。。。

休憩。1,2幕続けてやるからここが一番長い。転換も多かったが、すごい濃密でどっと疲れが。

3幕。背景が戦場の写真になっていて、娼婦たちがたむろっている。上手の茶色の壁と白い門。アルヴァーロはレオノーラが死んだと思っていて、黒いドレスの娼婦と奥に消えていった。戻ってきてレオノーラを讃える歌を熱唱し、その女に金を渡すと、女はしばらく唖然としたのち、金を拾って胸にねじ込んだ。これ、さっきの臙脂パンツスーツと同一人物。

上手から兵士が数人かけこんできて助けを求めるので、アルヴァーロが助ける。お互いに偽名を名乗っていたが、助けた相手はドン・カルロであった。友情を結ぶ。

Mariottiがジャンプを始めると音楽も突然軽快になり、戦争シーンが始まる。戦争はみせず、双眼鏡で眺めている人々のみ。すぐにアルヴァーロが負傷して、ドン・カルロに抱えられてやってくる。救えと言われた医者が白衣を着たら、話があるから二人だけにしてくれって勝手な。。。

アルヴァーロは死を覚悟して、胸のペンダントから鍵を取り出し、召使いが持ち歩いている箱を開ける。自分が死んだら燃やしてくれと。アルヴァーロは治療に行き、一人残ったドン・カルロは中の手紙を読むか迷うが、約束なのでがまん。写真は封がしてなかったので見てしまうと、レオノーラが写っていた。命を取り留めたという知らせが入り、自らの手で復讐できると喜ぶ。

この男二人の歌合戦もよかった。

と思っていたら、また民衆がなだれ込んできて、緑の帽子のダンサーズが緑のアラブっぽい衣装の肌を露出した女と踊り、民衆もふりを合わせて踊り、女が歌い、ってダンサーじゃなくてあのメゾか!風船つけた台に物品を乗せた物売りもやってくる。戦争で家を焼かれたと呆然とする親子達、神に祈り出す人々、が次々と違う調子で歌ってつなぎ、またダンサーたちがメゾを抱え上げてキメポーズ!あらすじでは「陣営に朝が来た」だけのシーンなのに、めちゃくちゃ盛り上がって、ぽかーん。

休憩のち4幕。民衆が皿をもって集まり、中央で修道士が一人でスープをがつがつ食べている。一人でひとしきり食べたのち、面倒くさそうに民衆に配る。新入りの修道士ラファエルが怪しいとぶつぶつ言いながら。

民衆が去り、修道士が数名、机についている。ハゲた男がその修道士ラファエルを尋ねてくる。みなが去った後、一人残った、客席に背を向けていた修道士がそれで、アルヴァーロであった。修道服の帽子をおろすとこっちもハゲ。って、因縁の男二人も年を取ったのだなあ。

ドン・カルロは飾りのついた剣を二本もってきて、決闘を申し込む。断ったアルヴァーロであったが、罵られ、結構簡単に剣をぬいてしまう。正面の扉が開くと階段が続いていて(裏山!)、二人が剣を合わせながら登っていく。

幕があがると、白髪のふえたレオノーラが一人、箪笥の影に隠れている。正面の扉が開いてアルヴァーロがやってきて、再会を喜ぶのもつかの間、自分が刺した瀕死の男がいると。レオノーラが階段にいくと扉は閉まるので、中で何が起きたのかわからない。

レオノーラが戻ると腹を刺されて血を流している。最後の一時間になっても兄は自分を許してはくれなかった。テーブルにあがったレオノーラに膝枕してもらうアルヴァーロ。冒頭と同じピエタのポーズなのに、死ぬのは女の方なのね。。。神父が駆けつけてきて呪うなとか言って幕。

素晴らしい。舞台を置き換えながらも物語を忠実に細部まで描ききった。この作品はミュンヘンでHarteros&Kaufmannでみた。テトラポットしか記憶になかい。歌は今日よりもよかったと思うが、全く感動しなかった。今日の舞台はたぶん細部まで忘れない。

昼間に初めてRijksmuseumに行って「夜警」を見たら、Christof Loyがオランダではレンブラント的な舞台を作ろうとしていることに気づいた。群衆をストップモーション、光で中心人物を写しだし、物語を予感させる。去年の1秒で泣いた「Khovanshchina」がまさにそうであった。

他の劇場でもいつもそうというわけではない。ドイツでは天井の低い箱で鬱屈を強調している気がする。「象徴的演出」とひとくくりにされるけど、劇場毎に変えている気がする。いまや、他の演出家の方がわわけわからん象徴を多発していて、Loyの方が具体的だ。

Mariottiとの相性はどうなのかなあ。感性は同じ方向だと思うから、ぜひコラボ続けてほしー。この夏はこれのリハーサルにかかりきりでペサロにいなかったらしい。

STAFF & CAST


目次に戻る