2016.6.10: Bohuslav Martinu "Juliette" @Berlin

Rolando Villazon、攻めてるなあ。もう高音でないし、そんな高くなくてもちょっと張り上げるとすぐ割れちゃう。でもそれをぶっとばす超・熱演。もはやオペラでなく演劇。

演出も攻めていた。白ずくめの、でもいろんな板を貼り合わせたパッチワークみたいな部屋。ところどころ、扉になってたり、引き出しになってたり、鞄がはめこまれてたりする。ってつい先日パリで見たClaus Guth(1964 Frankfurt)、ロンドンの「影のない女」も。いまいちだったが。

中央にねてる黒スーツの男ミシェルが起き上がって部屋を物色。上手の一つの扉が開いて、小男が前転しながら出てくる。ミシェルは声の美しい女「ジュリエッタ」を探している。手に拳銃をみつけて大慌て。ミシェルが下手の引き出しを出すと、臙脂色のスーツの女たちが十数人はいっていて、なんか歌い、またミシェルが押し戻す。

指揮は巨匠Daniel Barenboim。ボフスラフ・マルティヌー(1890-1959チェコ)による現代オペラ(1936-37)だが、多少メロディはあるので、悪くない。でも展開がヘンで終わりそうになっても延々続く。ドイツ語字幕が全然わからず、、、1幕はかなり睡魔に負けた。村長に推されて逃げようとしたり。

赤いワンピースで登場したヒロイン役のMagdalena Kozenaが歌うと目が覚める。声量も迫力もすばらしい。しかしこの目がでかい、かわいげのない女のどこがいいのだろう>Simon Rattle。Kozenaはこのロールをだいぶ前から歌ってるらしい、チェコ人だから?

休憩のちの2幕ではその白い部屋に天井からでっかい植物が生えている。三人のソプラノ紳士がなんか歌う。

ジュリエッタがやってきてマットを広げ、食器を広げ、果物を並べ、シャンペンを空けて、ピクニック。イチゴを加えてキスしようとすると、ミシェルがブドウを咥えてあわてて起き上がり、笑いがおきる。

好きだと言ってきたジュリエッタを受け入れられず(記憶を買っただけだから)、銃でバーン、殺してしまった。横たわるジュリエッタを抱くミシェルの手には真っ赤な血がついている。人々が出てきて殺人者とか言われる(が、人々もすぐその記憶をなくしてしまう)。

休憩のち3幕では、白い部屋は後方に下がり、スモークがたっぷりたかれている。照明だけで浮き上がる夢の国、夢から目覚めよ、さもないと戻れなくなると忠告する男、通り過ぎる人々。

いったんは目覚めようとしたミシェルであったが、ジュリエッタの元に戻ってしまった。後方では黒服のダンサーが冒頭のミシェルの演技を繰り返していて、ミシェル本人がそれに重なると、上手の扉が開いて小男が前転ででてくる・・・最初に戻る。たしかに戻れない。

カーテンコールでは満面の笑顔のRolando Villazon。一時は世界を制したテノールが、手術して声がでなくなっても、できることを精一杯やる。面白いものをつくるために。こういうのもまたヨーロッパでのオペラの醍醐味。メトや日本にはいかんだろうなあ。

旧東ドイツのStaatsoperは攻めてるなあ。来期も新作はいいキャスティング、再演には新進のオペラ歌手の名前もあり、楽しみだ。うー、ベルリンには何度も来たい。

STAFF & CAST


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