2013.8.13, 16: Rossini "L'Italiana in Algeri" アルジェのイタリア女

名作といわれる「アルジェのイタリア人」、たしかに音楽が文句のつけようのないほど完璧で、物語も面白い。今回は演出が嫌いだったが。

タイトル「人」にしてしまったのは、新進の中国人テノール・石倚潔が全部もってったから。フローレスよりもさらに軽い、いい声してます♪まだ荒いところはあるが。31歳、年下です。どうしましょう。

幕はスクリーンになっていて、開演前から古いイタリアのファション雑誌が写し出されている。

序曲の始まりと同時に、アニメ映像が映し出される。音楽に合わせて太陽が現れ、砂漠が広がる。石油が吹き上がり、炭坑が幾台も現れる。数人の派手な衣装の女が舞台を通り過ぎる。続いて青年が出てきて銃を持って戦い、映像のBang!とシンクロする。負けて捕虜になりSOSを送ると、イタリアのプールで泳いでいたナイス・バディの女が、執事みたいな男に命じて、白いビキニからピンクのパンツスーツに着替え、バッグに荷物を詰め、飛行機に飛び乗る。飛行機は嵐の中、砂漠に向かう・・・

と状況説明はよくされていたのだが、漫画チックな映像に神経を奪われ、序曲をちゃんと聞けなかった。

スクリーンがあがると、砂漠に白い宮殿?が下手寄りにある。部屋は丸く、へんな形の筒状の壁とともに回転する。下手側に入り口があり、白い丸い敷石みたいなので外へつながっている。赤い鳥(の模型)が一羽とまっている。下手の端に黄色い石油パイプがあり、奥までつながっている。背景には砂漠のシルエットが小さくみえ、太陽が輝いている。(一回目は下手横に座っていたので下手側はよく見えなかったのだが、二回目は上手横に座った。)

宮殿には奇抜な衣装の男女が数人。主の妻エルヴィーラ、女奴隷ズルマ、掃除する女が4人(星と黒輪のでかいカツラの女が二人、金髪の女が二人、白いワンピースに白いブーツ、マスクをかけている)。男が二人、一人はアルジェリアの海賊の首領ハリー、もう一人はゲイ坊主で水色のマントの下はピンクのショートパンツだ。。。掃除女とゲイ坊主はダンサー。

壁の上から男が後ろに倒れて落ちると、アルジェリアの太守ムスタファー登場。ショートパンツに水色の派手なシャツ、水色ラメのサンダル履き。ハリーとゲイ坊主を人間椅子にして、曰く、妻をイタリア人奴隷のリンドーロに払い下げるから、若いイタリア美女を拉致してこいと。壁に映像でデフォルメした妻の顔とSALDESの文字が。。。

舞台が回って壁に水槽が映し出される。リンドーロが上に上って水槽の掃除をしながら、サメに食われそうになりながら、イタリアに彼女がいるから困ったなあ、と歌う。これがいい声なんだ!上半身を水槽の外に出して、下半身を映像とリンクさせているのだが、そんなのどうでもいい。むしろ見ないで歌をきく。

また舞台が回って部屋に戻ると、ムスタファーが銃を乱射して奴隷が死んだりした後、飛行機の破片がどかーんと落ちてくる。原作では難破船だが、うまい。扉がカパッと開いて奈落からイタリア女イザベッラが現れる。映像に出ていたのと同じピンクのパンツスーツ。続いてイタリアの不良老人タッデオ。海賊がやってきて捕らわれそうになったので、イザベッラは彼を叔父だといって助ける。

もう一人ピンクのワンピースの太ったオカマが。。。歌手でなく芸人か。劇中、何度か衣装替えをしてずっと脇で小ネタをやっているのだが、下品で全然面白くない。

舞台が回って壁側になり、イザベッラがシャワーをあびる映像。タッデオがなんか言いながら見てた。イザベッラが自分に好意をもっていると勘違いした、はず。

宮殿に連れてこられたイザベッラをムスタファーは気に入ってエロエロ。妻がエロいドレスに着替えてきて懇願しても蹴り倒し、妻は横になって階段落ち。。。思いっきりドレスがはだけてた。

石油パイプから出てきたイザベッラは、妻と一緒にやってきた奴隷が恋人のリンドーロであることに、中国拳法をしながら気づき、思いっきりキスする。

ムスタファーには、妻の座はいらないから、この奴隷をくれたら、太守の自由になる、とか言ったはず。男女6人の重唱が非常によかった。エルヴィーラが何度も高音シャウトすると稲妻が落ちたり。

イザベッラの歌が全然ダメなので、声量なくて全然きこえてこないから、重唱ではエルヴィーラが主役。リンドーロもアリアは声量あったのに重唱ではセーブしてる感じ。

休憩のち2幕。

イザベッラはピンクの派手なバスローブでくつろぎ、掃除女を電話!とかカフェ!とかこき使っている。上手端の電話が鳴ってトットットと片足でコミカルに出てきたリンドーロと、逃げる方法を相談する。

舞台が回って壁側になり、イザベッラとリンドーロがタッデオにテレビのアンテナを持って壁にあがらせ、壁には受信したテレビの映像が映し出されるが、じきに映像が乱れてテレビが爆発。

ムスタファーは、イザベッラがなかなか自分の言うことをきかないので、ネコのぬいぐるみを愛でながら出てきて、タッデオに侍従の位を与えて味方につけようとする。タッデオは派手な水色の上着を着させられ、水色のキノコみたいなかぶり物をつけて歌う。ネコはすぐ投げ捨てられてゲイ坊主が拾ったのに噛まれてキャーとかいう小ネタをやっていた。

舞台が回って壁側になり、ピンクの照明が照らされ、掃除女たちがシーツでイザベッラの下半身を隠すと豊満な白のビキニ姿がちらちら見える。掃除女の二人とレズレズプレイ。(このへんの順序は怪しい。)この歌手は歌でなくこのスタイルで選ばれたのでは。調べたら、去年Edoardoやってたのと同じ、あの時も声くぐもっていまいちだった。。。

イザベッラは、エルヴィーラを招いたりしてムスタファーを巧妙にかわす。みんなでソファーに座って芥子の花を吸ったり。。。って麻薬ですか!

小休止。スクリーンが降りて、タッデオのもとに小包が届いて、古いイタリアのファション雑誌が紹介される。開演前に出ていたのと同じ。

スクリーンがあがると、リンドーロと二人で、ムスタファーに「パッパターチ」の称号を与える。イタリアでもてる男たちだけが参加できる、食べて飲んで寝るだけ、決して口をきいてはいけないという集まり、らしい。イザベッラも、ピンク系のラメラメドレスに着替えてやってきて、「パッパターチすごい!」などと盛り上げ、イタリアカラーのたすきを与える。

まず奴隷たちが黒いバックをもって出てきて中からカラフルな下着を大量に出して投げる。次にブタの鼻をつけて踊る。最後にイタリアの形の大きなショートケーキが出てきて(シチリアもサルディーニャもある)、ムスタファーががっついて食べる。最初はイザベッラが食べさせてたのだが、自分で食べ始めたら席を立ち、すぐ脇で服を脱ぎ捨てリンドーロと抱き合っていた。その格好が、キューティ・ハニー?白とピンクのボディスーツに胸元がぱっくり円形に開いている。ハート型でないのが惜しい。

背景には救援部隊やら梯子やらが映し出され、ほんとに梯子がでてきて、二人はそれに乗って帰っていった。タッデオとデブ芸人は乗り遅れていた。残されたムスタファー元サヤに戻ってハッピーエンド、とかうのは描かれなかった。

演出Davide Livermoreは去年の「チロ」 の人!白と黒を基調に映像も多用してたけどスタイリッシュだったのに、なぜにこんなピンクと水色のゲイゲイ仕様に。。。ゲイ坊主があまりに世界観を体現してるので、こいつが演出家本人なのではないかと疑っていた。演出家の恋人か?

面白いかもしれないけれど、演出は音楽とともに物語を紡ぐものであって、音楽を阻害してはいけない。ゲイはゲイを前面に押し出したらアウト。

STAFF & CAST


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