最初の目的地は Wuerzburg といっていたが、昨晩地図をみていて、主目的の Bamberg に先に行くことにした。小さい町でホテルも少ないだろうし、イースターなので、出がけに電話して宿を確保しておく。
9時半出発。せっかくの旅行なのに小雨が降っている。まずATMでお金をおろし、ガソリンを入れる。高速9号に乗って、一気に300キロ北上。
高速9号は走り易い。3車線なので真ん中を走っていれば追い抜くこともないし、カーブも上り下りもほとんどなく、ハンドルを持たなくていいくらい。
高速道路の交差する Nuernberg に近づくと少し渋滞した。一度は完全に止まってしまってどうしようかと思ったが、じきに解消した。
Bamberg は世界遺産の古い町だが、日本ではあまり有名でない。高速の終点だからか、方向がでかでかと表示してあって迷いようがなかった。まだ冬タイヤなのであまり速度は出せなかったが、2時間半で着いた。
12時半、一気に Bamberg 着。ぜっとんのナビで、まず町はずれの高台にある修道院へ。道端に路駐して、修道院の敷地内に入る。中にも停められたのか、まあいいや。
門を通ると正面に St. Michael 教会 (1015, 地震後1131再建)。中はどうということはなく。右翼に花で華やかに飾られた誰かの墓があった。左側廊に彫刻が並ぶ。骸骨の彫刻がへーん。
St. Michael 教会
中庭から町並が見渡せるのだが、今日は天気が悪く、もやがかかっていて残念。Bamberg というのは小さな町ではなくて、旧市街の外に現代的な町並が広がっているのだな。
修道院内の景色の見えるレストランで昼食にしようと思ったが、閉まっていて入れなかった。町中へ移動する。
大聖堂の近くで停められるところに適当に路駐。イタリアンかなあとか、いい感じの店がなくてうろうろする。
小ベニス地区
小ベニスといわれるだけあって、レグニッツ川の分かれ目に町があり、支流にいくつも橋を渡してあって、小綺麗な水辺の町。しかしベニスというのはいいすぎだ。
南ドイツの典型的な古い家、Fachwerkhausという、白壁で外側に木組みが出ている家が並んでいる。ほかにも赤茶色の切妻屋根の家が多い。ぱっと見は茶色で木の感じ。ベニスとはイメージがだいぶ違う。
主流には観光船もいる。細い川の流れは結構早く、橋のたもとをカヌーが通り過ぎる。天気がよければ眺めはもっといいだろう。
レグニッツ川はWuerzburgを通るマイン川の支流でライン川へと続く。南ドイツはドナウ川だから、北にきたって感じ。今はドナウとライン、黒海と北海は運河でつながってるけど。
橋の上で、一面に壁画のある建物に目をとめると、市庁舎 Alte Rathaus (14c, 15c改築)。前に回ると工事中だった。中は歴史博物館になっている。
市庁舎 Alte Rathaus
他にいい店が見つからないのでドイツ料理の店に入って昼食。超ティピカルにシュバイン・ブラーテン、クヌーデル、アップルジュースとか食べちゃった。
土産物屋をのぞきつつ少し歩く。小さな小物屋がかわいーっ、と騒いでいたけれどカード1枚しか買わなかった。
それにしても、すいてるなーっ。イースター休みなのに。みんな遠出してこんな中途半端なところには来ないのかしら?
大聖堂のある広場に出た。宮殿にも囲まれていて、なかなか壮観な広場である。落ち着いた黄色の石の色がいい。まず大聖堂に行ったが、ミサ中で入り口までしか入れなかった。
宮殿 Residenz
周辺をまた少し歩く。広場の裏に旧宮殿 Alte Hofhaltung、えらく古い臭い建物で、建築やってるぜっとんはえらく気に入っていた。
旧宮殿 Alte Hofhaltung
4時、宮殿 Residenz (1697-1703 バロック) の中をガイドツアーで見る(4EURO)。ギャラリーの大量の絵画をみつつ時間になるのを待つ。このさー、超基本だと思うんだけど、古い宗教画にかいてある頭の後ろの金の丸ってなに?
いくつか部屋を通って奥の緋色の寝室までいったときに写真を撮っていいと言われたので、戻りつつ全部の部屋を撮ってきた。最近は写真NGなところが多いけれど、ドイツは普通OK(ノイシュヴァンシュタイン除く)。
こういうマイナーな城は、人も少ないし、ガイドも丁寧でゆっくり見せてくれるし(ドイツ語だけど)、写真とらせてくれるし、いいなあ。
大広間では、ここの色は強いからフラッシュ使ってもいいよとわざわざ言ってくれた。すいませんねえ、カメラ小憎で。デジカメと一眼レフ(広角レンズ装備)二個持ち歩いてるしね。
部屋の内装はまあまあ。基調は白、天井画は少なめ小さめ。壁一面を覆う大きなタペストリーが多くて、絵柄は綺麗だが、布だから色があせてしまっているのが残念。とくに赤が抜けちゃうのかしら?
スタッコという漆喰細工も多い。彫るのでなく、作って貼る。ピンクとか水色とか金よか色もつける。一面白のスタッコの部屋は何様式と言っていただろう?
白の間、タペストリー
大広間は非常に美しかった。一面の絵画だが、彫刻のような錯覚を与える。金ピカごてごてじゃなくて、こういうのもいいなと思った。
大広間
そのあともいくつか部屋を見た。アジア風の小部屋、小さな礼拝堂などを経て、ツアー終了。ガイドさんありがとー。
宮殿を出て、大聖堂 (1215-37) に再チャレンジ。四本の尖塔はこの町のシンボル、ちょっと間が離れすぎてるのがマヌケだけど。で、今度は大聖堂の中まで入れた!人がいっぱいいる…。
大聖堂
見所は中世美術の傑作「バンベルクの騎士」、リーメンシュナイダー「ハインリヒ2世と妃の墓碑」、シュトスのマリア祭壇、というのはいま調べた。
ハインリヒ2世と妃の墓碑
あ、あれ? 前どっち? 後陣に円蓋があって青っぽい背景にキリスト像が描いてある。ドイツのロマネスク教会には両側に内陣があるというのはこれのことか!
その手前にあった墓がリーメンシュナイダー作。なんかアヤシイ気がして写真とってあった。後陣にむかって左の柱に馬に乗った「バンベルクの騎士」がかすかに写っている。シュトスの祭壇どこー?
6時、とりあえず広い道に路駐してホテルにチェックイン。小さい部屋だが感じはなかなかよかった。
荷物を置いて、まだ明るいので、また町を歩く。
ホフマン劇場とホフマンの家を見に行こう! 人の家とかって興味ないのだが、ホフマン物語の、オランピアの、ETAホフマンかと思うと、演劇・オペラファンの私としては見ておかねばなるまい。
劇場はガラス張りで近代的、家は…私がナビってるとなかなか目的地に辿りつけない…、これかーっ、狭っ!
ホフマンの家
うす暗くなって、小雨もふってきたが、残りの教会・城をみてしまおう。地図に載ってるだけで、ガイドブックに解説はない。もう中には入れないが、写真とるー。ほとんどオリエンテーリング。
ホフマン劇場 |
Gayerswoerth 城 |
Obere Pfarre |
St. Stephan 教会 |
|
Concordia 城 |
以上。夕食はホフマンの家の前のレストランに決まり。外観はお洒落でも中身はやっぱりドイツ料理。昼がドイツ料理だったから避けたかったのだが。骨つき肉とか食べちゃった。味には繊細さの工夫が多少みられた。
でも!ウェイター兼雇われ店長?のおにーさんがめちゃめちゃナイス!お洒落で〜エレガントで〜やわらかな物腰〜てきぱき動く〜。思わずフランケンワインをボトルで注文してしまった。
食後にカプチーノを注文したら、「僕から♪」とカルアミルクみたいなカクテルがついてきて、それに感動してたらカプチーノのカカオがハート型になっていた。
胸きゅーん。今後バンンベルクに行ったらまた絶対この店に来る!
11時、車を安全なパークハウスに移してから、ホテルに戻って就寝。
3月26日(土)
7時起床。朝食はいつものようにビュッフェ形式だが、シーフードが出てうれしい。
もう一日遊んで帰ろうという気分になって、ローテンブルグのホテルに電話して部屋を確保する。明日のタディ先生の出迎えには直接いけばいい。
9時半にチェックアウトして、駐車場に行き(6EURO)、10時頃からまた走り始める。
Bamberg までの高速73号が延びてた国道173号をちょい北上、Staffelstein を過ぎ、Lichtensfels で降りて表示に従ってちょい東に行くと。
フィアツェーンハイリゲン Vierzehnheiligen 教会 (1743-72) が見えたーっ!!! 11時、駐車場に停めて、坂を少し登って教会へ。美しいーっ!!! これはうなるものがある。
Vierzehnheiligen 教会
直訳すると十四聖人教会。世界遺産・Wuerzburg の宮殿を作った建築家バルタザール・ノイマン作。観光地としてはあまりしられていないが、建築史上では重要な教会らしく、前からぜっとんが見たいと言っていた。
その昔、羊飼いの少年が、ここで十四人の子供に囲まれて、オレたち聖人じゃーここに教会つくれー、と言われた奇跡により、巡礼地となる。
教会を作る時、しかしその場所が急斜面だったため(さっき登った坂)、修道院長が奇跡の場所を偽る。建築家は奇跡の場所に十字がくるようにしていたのだが、その場所は身廊の途中になってしまい、設計を変更したらしい。
まずはじっくり建物を見てみよう。黄色い砂石のファザード。まずこの色が絶妙に美しい。もっと淡い黄色はよくみるけど、東洋的な高貴な黄色だ。(天気悪かったからきれいに写真に出てない。)
一周する。教会の上の像も十四体になってるの? 教会ってファザードはかっこよくても横からみるとマヌケな場合が多いが、この教会はどこから見ても完璧に美しい。
左翼から教会内に入ると、身廊の真中に据えられた十四聖人祭壇が、正面の祭壇よりもきらびやかに目に飛び込んでくる。
聖人像があるわけだが、一人ファンキーなのがいるぞ! 聖人を特徴づける持ち物をアトリビュートというらしいが、聖ディオニシウスさんは自分の頭を持っとりやす。・・・死なんの?
教会の中は広く、明るい、白い。窓がたくさんある。淡いピンク、水色で、大理石、スタッコの装飾もあるが、埋め尽されているわけではなく、適度なボリュームで品がある。…私はもうほんの少しゴージャスな方が好みだけど。やりすぎは困るが。
天井画がかなり痛んでいるのが残念だ。絵柄がほとんどわからない。ヨーゼフ・イグナツ・アッピアーニ作だが傷んで他の人が描き直したり、塗り潰したりしたらしい。1983-90年に復元されたが…。
(写真左)小さい方が祭壇の上で、大きい方が中央、十四聖人祭壇の上。この二つはアッピアーニ作。(中央)オルガン側の三番目は19cにアウグスティン・パルメが描き換えてしまった。(右)脇祭壇は第一次世界対戦中にアントン・ラツィンガーが描いたもの。写真は「ヤコブの梯子の夢」。色鮮かで、このタッチの方が私は好きかも。
はぁー、来てよかった。12時半、次の目的地 Wuerzburg に走り始める。高速もあるが、遠回りになるし、走っていて楽しいので国道22号を選択。
でもなかなかその国道に入れず、町中につっこんで渋滞に巻き込まれたり、手間取る。ぜっとんナビでなんとか復帰。22号に入ってからはるんるん。小さな町通過って、なんとはなしに楽しいでしょーっ。
2時、Wuerzburg 着。本日はバルタザール・ノイマン特集で、宮殿 Rezidenz をみるのだー。この町は、去年ロマンチック街道を走破した時に最終地点として来て、町の教会はあらかた見た。でも着いたのは夕方だったし、世界遺産であることはノーチェックだったので、宮殿は見なかった。
Residenz の駐車場に停めて(5.5EURO)、まずは昼食としよう。Dom 方向に歩いてパンケーキの店に入る。ここでいうパンケーキは甘くなくて、ハムとかチーズとか入ったピザ+お好み焼き/2みたいなもの。
3時、Residenz。大階段とティエポロの天井画が有名らしいよー。でも最近、どこか修理中らしくて、見られないかもよ? えーっ、などと喋りつつ建物の中へ。
デジカメのメモリが足りなくなりそうだったので、ぜっとんにお金を渡して切符(5EURO)を買っておいてもらい、私は開いてない方のカウンターでメモリ交換。
「買ったよー、ほら、後ろの人、並んでるから」
「あ、はいはい」
と切符を受け取り、もぎりのおじさんに渡す。この日はリュックサックを持っていたので、コインロッカーに入れろと言われる。最近、こういうの多い。観光するときはハンドバック+カメラ手持ちの方がいいな。
それでコインロッカーに荷物を入れようとしたら、あれ? あれ?
財布ない・・・(以下この話)
さっきコートのポケットに入れたはず。ベンチに座って荷物を全部ひっくり返してみるが、やはり出てこない。
やられた。財布すられたの初めて。ドイツは治安がいいから、油断した。その時たしかに、財布の存在を忘れた。やっぱり日本人が集まる超メジャーな観光地では気をつけないとダメだ…。
売り場のおじさんに言って、警察に電話をかけてもらう。自分で警察署に来いと言われ、あの、場所わかんないんですけど…、電話かけた人がしってるからその人にきいて。
地図をもらって、警察署にたどり着く。受付で用件を言うと、担当が来るからそこでしばらく待てと言われる。待つ・・・あの、早くクレジットカードを止めないといけないんですが、電話かしてもらえませんか?
前にクレジットカードを落としたことがあって、50万くらいの時計を速攻買われた。サインが全く違ったから私は払わなくてすんだけど。キャッシングも2度試されて、暗証番号がばれずにお金も引かれなかった。そのときカード会社の人に、カードは盗まれた直後の30分が勝負なので、一刻も早く連絡をと言われた。
カードの番号わかるの? そりゃ盗まれたんだからわからないけど、カード会社にかければ、私の名前で止められるはずです。カードの番号わからないんならダメだよ。郵便局のキャッシュカードも止めないといけないんです。
ああ、郵便局ならそこにあるから、行ってくれば。でも、私はここで待ってないといけないんですよね? あ、いつになるかわからないから先に行ってきていいよ。はい…。
土曜日で、郵便局はもう閉まっていた。インターホンを鳴らしても誰も出ない。緊急の連絡先の番号も書いてない。偉い人の番号ならあるが、ここでもいいからかけてみるか。
公衆電話ボックスへ。ぜっとんにお金を借りる。宮殿のチケットを買ったのに、見ることもできずに、ずっと私についてくれている。
てか、ぜっとん、郵便局のカード持ってたよね? それに書いてあるじゃん! でも紛失届用の番号じゃないよ? どこでもいいんだって、こういう時は。
名前だけですぐに止められた。あたりまえである。再発行の手続きは休日明けに自分で郵便局に行ってやれと。へいへい。
警察に戻る。じきに担当官がきて、事情徴収が始まる。てか、英語、通じないんですけど。片言のドイツ語単語とジェスチャーでのりきる。
あの、まだクレジットカードを止めてなくて、先に電話かけさせてください! そんなことしなくても、盗難書類作れば、自動的に止まるよ? それっていつの話だよ!
電話番号わかるの? しらん。その電話帳でカード会社の番号しらべる。カードの番号わかるの? わからないんならダメだよ。わからなくても止まるんだって!
カード会社に電話したら、日本語サービスにつないでくれて、もちろん名前だけで速攻止められた。「お止めいたしました。使用された形跡はございません。再発行の手続きも今、なさいますか?」・・・日本のサービスってなあ。
事情徴収続き。途中、万引で捕まった若者が来て中断される。さっきから思っていたのだが、この警察署には刑事が三人しかいない気が。
今にして思えば、私は開いてないカウンターの前にいたのに、その私のすぐ後ろにくっついていた人たちが怪しい。ぜっとんが私に声をかけた時に、なんか硬直してたしね。
一通り話をした後、よし、わかった。じゃあ、これから調書を作る。この紙に名前と住所と盗られたもの、カードの番号もわかったら書いて。
わからないって! 刑事さんはコンピュータにむかって一本指でタイプしながら、事件は今日の何時にどこで? とまた最初の質問に戻る。話ききながら調書つくってくれよー。
運転免許証もないのだけれど、警察の書類を見せればいいといわれた。車の鍵があったのがせめてもの救いだ。
ぜっとんは今日の夕方に別の場所に電車で移動する予定で、3時か4時のに乗りたいと言っていたくらいのだが、そんな時間はとっくにすぎた。先に帰っていいよと言ったが、最後までいてくれた。結局、3時間かかった。
Residenz に戻り、お金をかりて、駐車場を出て、ちょっと迷って駅に辿り着いて、6時半にぜっとんをおろす。乗りたいと言っていた電車に乗れたかしら?
駅のロータリーをぬけてすぐのところでいったん車を停める。ふーっと深呼吸。ローテンブルグいってもう一日遊ぶとかいう気分はぶっとんだ。お金もないし。カードもないし。とにかく無事にミュンヘンの家に帰りたい。
これから運転3時間半。気をつけていこう。
6時50分、走り始める。高速にのる前にガソリンを入れ、カプチーノでまた一息。7時半頃から高速。
8時、Nuernbergすぎのパーキングで力つき、車中ですぴーっと仮眠。30分ほどしてむくっと起きて、ホットチョコのんで、50分、走り始める。
ちょうど10時、ミュンヘンに帰宅。よかった・・・。