2016.7.6: Berg "Wozzeck" @Frankfurt

ベルクで泣くと思わなかった・・・

舞台は例によって箱の中の人中心のシンプルなもの。可動式の壁三枚で区切られた灰色の部屋。それぞれの壁には穴があいていて、人々が行き来する。

タキシードの初老の爺(大尉)がウォツェックと話す。ウォツェックは爺が定番だが、オレンジのTシャツにジーンズの若い男!そうきたか〜。で、ひげそりは?未婚で子供ができたことを説教されている。下手の小部屋で真っ赤なワンピースの妻マリーがうなだれている。あと半ズボンに牛乳瓶眼鏡の男が白痴。

場面かわって、夕暮れの背後から光差す田園。青シャツの若い男が稲を束ねている。この劇場でDon OttavioだったイケメンテノールMartin Mitterrutznerをここに配置!ガタイいいウォツェックと比べて、スラーッと細身で美しいわぁ。

また灰色の家にウォツェックが帰宅。マリーが白シャツに短パンの男の子フランツを連れてくるが、ウォツェックは気づかずなんか妄想を語る。ピンクのワンピースにハイヒールの女(隣人マルグレート)がなんか言う。

病院なのか、上手の椅子に患者が数人待っている。紫シャツにスーツに白衣の男がウォツェックと話す。精神錯乱の実験をしているのだ。上手で、白痴がいじっていた黒い長いブーツを半裸の男が履いて服をきる。これがマリーの愛人である鼓手長だった。胸毛マッチョで美男じゃないんですが。

このあと下手の部屋でなんかやってたが見えず。マリーが鼓手長に話しかける場面か?

いちお2幕。場面転換は均一で幕が変わった感じしないけど。

マリーが豪華なイヤリングをしてきてうれしそうに眺める。ウォツェックが帰宅して、文句いい、金をおいて去る。金は子供が拾っていった。

大尉と医者が通りかかり、ウォツェックになんかいう。マリーが浮気していると?マリーは上手の小部屋で浮気どころか数人の男達に囲まれていた・・・

しばし間があって幕があがると酒場!一気に大勢でストップモーションでテンションあがる。低めの舞台にオケの人が3人くらいいて演奏を始めると、人々はスローモーションで戯れる。マリーが下手から上手へするするぬけて、上手端で鼓手長とキスして消える。それをピンクの女が覗いている。青シャツの男は黒スーツの女と抱き合ったのち、ピンクの女に狙われる。そこにいたウォツェックに、白痴が血の臭いがすると騒いで幕。

幕があがるとシャツにパンツのみの男達がずらっと並んでいる。中央付近に青シャツくん(着てないけど)。ウォツェックがなんかいって、鼓手長に組み敷かれる。青シャツくんが別の男の膝にのって抱かれてた!えっと、これ兵営の衛兵室。

3幕。黒い幕の前でフランツがマリーに本を渡し、マリーが朗読して狼狽する。聖書であった。

再び田園。ウォツェックがマリーにキスしたのち、田園に押し込んで殺害。真っ赤な月は昇らなかったし、ナイフで喉もつかなかったが、田園だけで十分おそろしい。

再び酒場。舞台にはピアノが置いてある。ピンクの女が、ウォツェックの腕に血が付いているのに気づいて、舞台にあがって騒ぐ。

その酒場の背後の壁がするすると開くとそこは田園!ウォツェックが田園に自ら突っ込んで消える。あ、水あるもんね。ナイフを洗おうとしたのか?この酒場と田園とが隣り合っている関係性を明示したのがこれが最初で最後であった。

誰もいなくなった酒場に、タキシードの男と医者がやってきてなんかいう。

幕がおりて、壮大な音楽。あれ、これで終わり・・・?

幕があがると少し雲のかかった青空で、白痴と子供達が遊んでいる。母が死んだと言われて取り残された男の子はフランツで、白痴に飛べ飛べいわれて少し縄跳びをやったがやめてしまい、立ったまま背後から白痴に目をふさがれて、幕!!!

どこにでもいる貧しい若者の悲劇、そして残された子供の未来は・・・それがベルクの音楽とぴったりだったのだ!ノイズだとばかり思っていたあの音楽と。これ以上の「ウォツェック」を見ることはこの先あるまい。

Christof Loy(16作品目)、いやー、またえぐりまくりの演出。舞台はシンプルであるが、ピンポイントで出てくる背景(田園とか青空とか)が凝っている。酒場のストップモーションがものすごく動的にうつって効果的。青シャツに加えて二人の脇役ソリストもイケメンであった。美しいほど、哀しい。

オーディションで厳選したであろう歌手たちも秀逸。ウォツェックは声量はちょっと物足りないがマッドな顔がぴったり。歌が異様にうまかったのはマリーと大尉。Claudia MahnkeはOpernweltにもノミネートされたことあるらしい。

フランクフルトなのにほぼ満席で、それなりに人気あるのかな?ま、遠征しまくってる私が世界一のファンである自信あるけどね!

STAFF & CAST


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