2013.5.7: Mozart "Die Zauberfloete" #4

4月にみたDavid McVicar演出の別キャスト。モーツァルトは好きではないが、Simon Keenlysideが久々の当たり役パパゲーノを久々にやるので。

去年はキャンセルしまくりで(家庭の事情で。奥さんが病気になって子供たちと話をしすぎて声が枯れたらしい)、前回ウィーンでもちょっと声の出が悪かった。ファンサービスも悪いし、偉そうだし、ちょっと心が離れかけていたのだが。

ごめんなさい、って感じだった。あの大きなロイヤル・オペラハウスを完全に掌握していたパパゲーノ。パパゲーノが何かする度に、観客が前のめりになって物語に入っていくのが肌で感じられた。いつもは退屈な後半でも集中力が途切れず、笑いも起きて、最後はなんか爽快だった。

ただ二幕で衣装の上からつけてた白い腰紐は、、、腰痛もちのサポーターでは?腰痛なのか?パパゲーナを抱え上げるためか?この後もキャンセルしないで出てくるのかな。。。

ということを、出待ちして聞きたかったのだが、聞かれたくないんだろうなあ、と思ったら、なんか出てくる気がしなくて、それでもいちお一時間待ったが、やっぱり出てこなくて、諦めて帰った。

場内が暗くなると、球体の灯りを持った女性たちが劇場内の各階に二人ずつ現れる。音楽が始まると少し歩いたのち、音楽に合わせて一斉にさっと灯りを覆って退場する。

白っぽい壁の舞台には下手寄りに小さなドアがぽっかりと開き、中ではスモークがたかれているので、内側から青水色光が流れ出す。剣を腰に差した若者が静かに現れ、すっとその扉の向こうに吸い込まれていく。

ゆっくりと扉が閉まり、ぴったり閉まった後で、すっと壁が上空にあがる。と、舞台中央にでっかい緑色の大蛇がうねっている!

この冒頭からしてMcVicar演出。一気に物語の世界に引き込まれる。

出てきた侍女三人の頭はスキンヘッドなのに大きなかつらをつけていて、やばい感じまんなん。

舞台面がぱかっと開いて、奈落からよいしょっとパパゲーノが出てくる。角に足をかけたところで、軽くおっとっとの演技。つかみおっけー。鳥かごにヘッドスライディングしたり、タミートと一緒に行くことになって、鳥の網とか餌とかポケットのものを奈落にポイポイと放り込んだり。パパゲーノから目が離せない。

銀の鈴の代わりの回転する楽器は、抱えたり、床においたりして、鈴の音に合わせてぐるぐる回す。時々、回さないで自分が回っちゃったりする。

パミーナをつないでいるロープがなぜかやたら長いので、豪快に逃げ回ることができて、なんかエロい。

神殿の場面、黄色の地下っぽい光の中に天球儀を配置するまでは他の演出家でもできるかもしれないが、その傍らに机に向かってもくもくとペンを動かす少年と前をむいて静かに座っている少女を配置するのがMcVicar演出。

その少女は森の場面にもついてきて、動物たちの回りをちょろちょろと動く。二羽のカラスと、トラとかシカとかかぶり物だけのダンサーは失笑ものだが、少女がいるせいで、なぜか幻想的に見えてしまう。

最後にザラストロが試練を与えた後で、金色のライオン頭のダンサーが這って踊るのは、荘厳ですらある。ザラストロの椅子の脚を支えていたライオンが踊り始めたように見えて、ザラストロが偉いように気がしてくる。

休憩後の二幕は、場面転換が多いので何がなにやらだが、インパクトがでかいのは、パミーナがベットに乗って運ばれてくるところ。エロい。

パパゲーナがパミーナの肩を抱いて歌うのもなんかエロい。え、そっち狙い?パパゲーノは夜の女王たちに囲まれている時もおもむろに太股に手を置いたり。豊満なパミーナを抱えて数歩も歩き、老婆に化けたパパゲーナには思いっきり押し倒されて、そこはダメ的な仕草もするし、おまけに立ち上がるとズボンが落ちる。。。エロエロ・パパゲーノ!!!

自殺未遂のシーンでは、1,2,3を全部ためずに、3だけ短くいってさっさと死ぬふりをするが、少年たちに止められて、さっさと止める、この間のなさ加減が逆に気持ちいい。モーツァルトのベタすぎるギャグはこのように調理されるべきだ。

試練の後、先のベットにはパパゲーナも乗って運ばれてきて、パパゲーノが走って角にぶつかりながらも飛び乗り、パパゲーナに蹴り出されそうになったりもする。最後には二人と子供たちをわらわら乗せて運び出されていく。パパゲーノが幸せになってよかった〜

最後の場面、夜明けっぽい光の中、出てくるでっかい太陽を見て、この演出は夜から昼への一夜物語なのだ、とわかった!!!そういえばベットとか夜を連想させるものが多かったし、パミーナはネグリジェだし、照明もずーっと夜だった。朝になって日が昇り、金色の光が降り注ぐ。

最後の合唱が始まる前に、主役たちはみんな退場して、弁者だけがやれやれという感じで居残り、舞台面に並んで合唱する。人々は黄色っぽい衣装を着ているので、黄色みを増してくる光の中に溶け込んでいく。

ああ、もう一度みたい。今日は双眼鏡を忘れてしまったのでなおさら。

歌手は、パミーナを除いて5月の方がよかった。タミーノはいわゆるテノール声でなくて、Flroezがmaster classで言ってた、まさにモーツァルトのdreaming voiceってやつだった。夜の女王は、最初のアリアは最後がちょっとはずれて、二つ目のアリアはなんとかぎりぎり歌えてた。

指揮がとろいのは相変わらず。転換おわって歌手も配置についてるのに降り始めない。これじゃ2幕は90分超えちゃうよ、と思いながら見てた。たぶんドイツ人のおばさん。モーツァルト好きすぎて溜めちゃうのかな。今日はPapanoがオケピで監督してたらしい。

STAFF & CAST


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