久々のザルツブルグ音楽祭。スターキャストだけど、チケット高くて満足度はまあまあなのだが、ちょうどミュンヘン西で会議があったので。2020年のChristof Loy作品、当時はパンデミックで簡素版だったが、哲学的だと高評価だった。
真っ白な舞台に白いドアが二つあるだけ。開くと奥にも窓があり、作り込まれている。前面は階段状でオケピにつながっている。舞台面下手寄りに黒いハイヒールが二足転がっている。
黒いワンピースの女が二人出てきて、姉が妹の髪をさわり、二人で眠りにつく。このわずかな違いがこの物語の衝撃の結末に至るとは予想だにしなかった!
彼女らの恋人の男二人が黒いタキシードで出てきて、白髪の老人と話をする。開演前アナウンスがあったとおり。アルフォンゾはドクターストップで歌えず、演技のみの吹き替え。オケピで小太りのおっさんがパワフルに歌うが、表現が合ってないのは仕方ない。俳優の方はちゃんと口を動かして歌うフリをずーっとし続け、物語演出に対するレスペクトを感じ、感動的ですらある。
男たちは女たちの貞節を確かめる賭けをすることにして、戦争に行くと嘘をつき、女たちは嘆き悲しむ。
のもつかの間、カンカンカンと音をたてて泡立て器をまわしつつ、小柄なメイドが登場。このデスピーナ、Lea Desandre (1993 仏-伊)、初見だが、演技も歌も完璧で、この物語のすべてをもっていく。
男二人は緑と赤系の服に着替えてやってきて、姉妹を誘惑する。緑がズボンのチャックをはずすと、女たちは大急ぎで逃げる。
男たちが毒を飲んで倒れたふりをすると、デスピーナが医者のコスプレできて、黄色のゴム手袋をはめ、箱から大くて重そうな石を取り出し、男ふたりにかかげると、生き返った。この重くて落としそう演技も完璧だった。
休憩のち後半。
姉がどっちがいいと聞くと、妹はダークヘアーの方と即答、姉はブロンドの方ねとまんざらでもない。それは元々の恋人と違う方。姉は下手のドアの向こうに行き、妹の成り行きを見ている、ような。
妹は緑に言い寄られ、恋人の肖像画の入った銀のペンダントをはずし、もらった金のペンダントをつけてしまう。気づくと背後の白い壁が少しずつ開いて、黒い背景に一本の大きな木が現れる。(これ、初演にはなかったらしい。闇に落ちた表現か。)
そのことを聞いた赤は落胆するが、姉の方に猛アタック。デスピーナが二着の黒スーツを投げ入れると、姉は一つを拾って着る。誘惑を断ち切るため、戦場に行こうと。が、赤がナイフをもってきて、死ぬと言うので、行けなくなる。
デスピーナが弁護士のコスプレで来てすっとんきょうな声で歌い、結婚式が始まる。姉妹はレースのヴェールをつける。アルフォンゾのズボンからシャツが出ていて、すっかりデスピーナの下僕になっているのが面白い。
緑がスーツを脱いで黒のタキシードに着替え、女たちを問い詰め、種明かしをする。
姉と恋人は抱き合い、妹と恋人は見つめ合ったまま幕!
「Cosi fan tutte」じゃないじゃん!ペンダントを着けちゃった妹は元サヤに簡単に戻ることはできず、戦場にまで行こうとした姉はすぐに許される。これよこれ、このオペラの正しい解釈はこれ!Loyのおかげで、ずっと駄作だと思ってたオペラが好きになり、また心に刻みつけられた。
舞台セットが白いドアのみなのは、選択肢の少ない閉ざされた環境にいる女たちを表現しているらしい。なるほど、だから恋人がいなくなり、別の男が現れると、そっちに行ってしまうのか。
2020年の初演とほぼ同じキャスト、妹だけダークヘアーのMarianne Crebassaから変更。全員よかった、特に姉役のElsa Dreisig(1991 仏-デンマーク)、ルイーズか!指揮はサブの若い男でまあまあ。
久々にザルツのプログラム見たけど、スターキャスト揃えてる。でもBarrie Koskyのランスとか見たくない。Garancaをアリアドネにキャスティングして降板騒ぎになったのもここか。自分が歌えないくせにintendantのせいにしてたとかいう。