2024.1.23: Strauss "Elektra"

幕があがると20世紀初頭を模したというピンクぽいベージュ色の舞台。

中庭でメイドたちがタバコをふかし休んでいる。右手に階段、背後の高窓の廊下につながっている。

エレクトラはなかなか出てこない。中央に地下につながる入口があり、そこから出てくると、メイドの格好をしていた。プリンセスなのに。父は殺されたと復讐を誓う。

ピンクのショートドレスのクリソテミスがきて、復讐などやめろというがきかない。

青のロングドレスに純白ファーにティアラの母クリタムネストラがきて、最近眠れないとほだしにかかるが、エレクトラはほだされない。

そこへ弟のオレストが死んだと知らせがきて、クリタムネストラは勝ち誇ったように喜い、エレクトラは絶望する。

エレクトラが一人で母を殺そうと決意し、斧をもって階段をあがるも、召使の男に蹴落とされてしまう。

コートの男がきて、エレクトラは気付かないが、脱ぐとスーツのオレストだった。弟が生きていた時の彼女の喜び、Christof Loyが言っていたようにハイライトだった。

ずっと主人公として物語をひっぱってきたのに、一気に脇役にまわり、オレストが階段をあがって母を殺しにいく。窓からは慌てる男たちがみえ、階段から飛び出してくる人々もいる。

エレクトラは腕を振り回し狂ったように踊り、そのままバタンと倒れ、死んだの!?彼女は復讐のために生きていて、それが遂げられたから昇天したのだろう、と思い、泣いてしまった。その前から泣きそうになった瞬間は何度かあったのだが、最後になってだーっと。

目当てのNina Stemmeが風邪で代役Ausrine Stundyte、クリスマス前に3週間スタジオでLoyと作っていたというだけあって、一挙手一投足にLoyのエレクトラが宿っている。歌はNinnaほど迫力ないかもしれないが、物語としてはラッキーだった。

声が一番のびていたのはSara Jakubiak、「ヘリアーネ」好演の、自我のない女をやらせたらピカイチ。Karita Mattilaもいい、強い声の悪い女がよく似合う。

このオペラは血みどろの復讐劇ではない、Loy曰く、piece of love as the lack of love。エレクトラをこんな楽しめることなんてもうないだろうなあ。

Pappanoの契約期間での最後のオペラがLoy演出のシュトラウス、最初のオペラもLoy演出の「アリアドネ」だった。コロナで延期になったからだけど、パンフでもプレトークでも二人がお互いに認め合っているのがうれしい。

ここ数年の最高傑作。論評でギリシア時代なのに現代衣装なんて書いている輩の底の浅さよ。普遍的な感情を描き出すのがLoy演出なんだから!

STAFF & CAST


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