また作り込んだ舞台。教会、下手の入り口から黒人の脱走犯が入ってきて、奥の礼拝堂に隠れる。カヴァラドッシのキャンパスは中央で絵は見えない。美少年が手伝っている。堂守が食べ物を持ってきて、上手にあるはずの祭壇に礼。このへんの細かい演技がリアリティを生む。
トスカがきて、鍵がかかっていて話し声がしたとジェラシー。現代的な黒い膝丈のドレスでちゃんと黒髪。真っ赤なバラの花束をもってきて、マリアの祭壇に飾る。
下手の入り口からミサに訪れた人々が入ってくる。彼女が帰ろうとすると、子供が気づいてサインをねだる。ヴィクトリアンな真っ白い装束&かつらの貴族も二人たたずんでいる。
中央上手寄りの赤いカーテンが開くと、司祭らがどーんと入ってくる。子供達も歌う、ここは非常にテンションがあがる。
ナポレオンが敗退し、堂守がやってくるが、カヴァラドッシはいない。スカルピアが家来たちと脱走犯を探しにきて、昼食が空になっているので、カヴァラドッシを疑う。少年が引っ立てられて連れて行かれる。トスカもきて、スカルピアにカヴァラドッシが浮気してると言われる。
休憩のち2幕。スカルピアの執務室、大きなテーブルがどーん、下手端に座って食事をする。セットは1幕の壁の使い回しなのだが、雰囲気が全然違う。カヴァラドッシが連れてこられて、弁護士ともども、上手奥の部屋に連れて行かれる。弁護士いたのがかえって不気味。
トスカがきて赤のガウンを脱ぎ黒のふっくらロングドレスになり、ネックレスをはずして渡して頼む。舞台奥は控えの間になっていて、ビクトリアンな貴族たちの姿が見えていたのだが、また赤いカーテンが閉じられ、密室になった。
トスカは下手奥の部屋をみて取り乱し、脱走犯が別荘の井戸に隠れてることを教えてしまう。それでトスカは出てきたカヴァラドッシになじられる。さらにスカルピアに助けたいなら俺の女になれと。トスカはドレスもカツラも脱ぐ。舞台中央前面で、背後からスカルピアに抱きしめられたトスカの心がポキッと折れた瞬間が見えた・・・
でもそのあとにテーブルに果物ナイフがあることに気づき、考える間もなく、下手の机に向かって書類にサインをしていたスカルピアを刺す!倒れ込む彼を何度もさし、手をふいて、自分の服とカツラを集め、ふと気づいて蝋燭を遺体の傍らに据えて下手より去る。
はー、ここまで物語に忠実に細かい描写で丁寧な作り。と、隣のおじさんとも話していた。3幕でLoyの解釈が炸裂!
幕が開くと小さな箱の牢屋、小さなテーブルと椅子に座ったカヴァラドッシ、下手側のドアよりトスカが訪れるモンタージュ、トスカは何度も声をかけるがカヴァラドッシは無反応。ここで羊飼いの歌、、、泣ける。この歌で初めて泣いた。しかもこれ歌ってるのはカヴァラドッシの小姓の美少年なのでは。彼より先に拷問を受けて死んでしまったのだろう・・・すごい物語ぶっこんできた。
歌が終わると朝で、下手側の格子窓から光りが差す。カヴァラドッシは監守に指輪を渡し、彼女に手紙をかく。
そこに本当にトスカがきた。カツラをはずし赤のガウンを羽織っただけ。さっき来た時はドレス着てたから、あれはカヴァラドッシの夢だったのだろう。現実の彼女は取り乱し、赤いカーテンを描いた中幕がどーんと降りてきた。彼女は歌手だからステージの世界に入りこんでいて、死刑はみせかけで銃弾は入ってない、死んだふりをして、二人で逃げると熱く語る。それを頷きながら聞くカヴァラドッシは全く信じちゃいねえ!
うわー、これは切ない。いつもはトスカのバカ女ぶりが嫌いになるのだが、彼が信じてないとなると、切なさしかない。
そして文字通り、幕があがる。舞台は白い城の屋上、奈落から階段があり、あがってくる白い衣装の兵隊がストップモーションをしている。動き出すと一気にカヴァラドッシを囲み、バンバンと撃って、彼は倒れ込む。兵隊たちはさっさといなくなり、トスカが来て、彼が死んでいることに気づくと、兵隊たちがあがってきて、奥の城壁から身を投げる!
ここで飛び降りるのもなんだかなあといつも思うのだが、彼女はスカルピアを殺した時点で狂っていると思うと合点がいく。
この3幕のLoy解釈により、10回も見たトスカで初めて泣けた。
ENOに音楽は期待できないのだが、トスカSinéad Campbell-Wallaceはよく、カヴァラドッシAdam Smithは張り上げる歌い方で高音が出る気がしないがぎりぎり出てて、代役でまあまあ。指揮Leo Hussainが歌を邪魔せず丁寧に盛り上げて大満足。Dress Circleの中央で、いつもよりいい席だったのもある。