舞台前面に、客席を背にして椅子が無造作に並べられている。男が紙束に何かを書きながら出てきて座る。
幕があがると中央下手寄りに机と椅子、田舎ぽい木々を描いた壁があり、上手には窓枠、左手にも木の壁がある。赤いドレスの女とタキシードの男が言い合いをしている。男は作曲家フリッツ、「はるかなる響き」が聞こえると言い、恋人グレーテを捨てて家を出て行く。
女の母親がやってきて家事をしろという。父親が大勢の男達と連れだってやってきて、娘を賭けて負けたと。飲み屋の主人ヴィゲリウスら男達が女をからかう。濃厚なシーンがあるかとドキドキしたが転換。
同じ机と椅子があるが、背景は深い森。絵でなく、本当に木々が並んでいる。女は服をぬぎ、下着姿になって入水するもよう。すると老婆が現れ、続いて森の奥から色とりどりのドレスを纏った女たちと男たちが現れる。
老婆を中心に女たちは机に集まる。グレーテもそれに加わり、絵画のようなポーズを作る。上手に男が二人立っていて、一人が服を脱ぎ始めている。。。音楽も盛り上がり、幕!
出だしは二人のメイン歌手の歌が定まらなかったが、ソプラノは徐々によくなった。音楽は全体的にまあまだが、ところどころドラマチックで盛り上がる。
休憩のち2幕。十年後。背後は暗闇で、星のようなオレンジの灯りが集まっている。ドレス姿の女たちが乱れている。老婆はド紫のドレスで、三人の女たちが歌う。一人バレエのトウで立つ女がいる。
1幕最後の男二人は黒いドレスを着ている。。。やっぱりそうなるよね。
グレーテは真っ赤なラメのロングドレスに肩に真っ赤なファーをかけ、男達に差し出された真っ赤なバラの花を一輪ずつ受け取りながら登場。一番人気の歌手らしい。求婚する男達に歌比べをさせる。
伯爵がバラードを歌う、これはよかった。小柄な騎士が机にのってすっとんきょうな歌を歌う。
そこへフリッツが帰ってくる。グレーテはすぐに気づき、抱き合ったが、また男が「響き」とかいうので、グレーテは伯爵たちの元に戻る。フリッツは、彼女が娼婦に成り下がったと知って絶望する。
伯爵が決闘を迫り、フリッツが罵って去る。グレーテは伯爵と踊る。音楽は踊ってたが踊る前に幕!
休憩のち3幕。数人の男女のシルエット、これまた完璧な配置。光りが灯ると白い壁に浅く囲まれた空間、下手寄りが入り口があり、奥は舞台のなっているもよう。
フリッツの作品「たて琴」が初演されるが、役者たちが文句を言っている。老婆とヴィゲリウスもいるが、モノトーンのスーツを着ていて誰だかよくはわからない。赤いドレスの女もやってくるが男だった。
満を持して白い壁があがると冒頭と同じ机と椅子に赤いドレスの女がつっぷしている。フリッツが彼女を見つけたと思って近づくと、男はかつらを脱ぎ捨てて去る。えぐるなあ。このシーン、歌はなく音楽だけで完全に演出。ここが本日一番のシーンでうるっときた。
あらすじには浮浪者にからまれた彼女を助けて再会と書いてあるが。。。
冒頭の田舎の木々の壁のところにフリッツは戻った。友人ルドルフがきて、「たて琴」の最終幕を書き直せば傑作になると言うが、フリッツにその力はもうない。ヴィゲリウスがなんか言って、灰色のコートにちぢれ髪ショートヘアの女がやってくる。
双眼鏡でみてもよくわからないがグレーテらしい。二人はついに抱き会うが、フリッツは不治の病に冒されていて、彼女に抱かれてご臨終。
彼女が戻った時に「はるかなる響き」が聞こえて、それをもたらしていたのは実はグレーテで、響きが聞こえるかい?と言って死んでいったらしい。英語字幕ないのでわからん。
3幕はテノール(Daniel Johansson)の歌がよくなった。ソプラノの方がうまいけど。Loy常連のAgneta Eichenholz。
物語は面白く、演出は大満足、でも音のバランスが悪かった。大きなオケで、上の方の席だったから、歌がかき消される。ストックホルムじゃ仕方ないのかなあ。もうちょっといい劇場でLoy演出やっほしいのに、Loyさん小劇場のカンパニー好き、合唱団にも一人一人演出つけるスタイルだから。でも遠征した価値は十分あった。
* * *
プレトークの動画、よかった。Loyは音楽と歌詞をほぼ暗記して劇場入りすると!このオペラのすべての役にシュレーカー自身が投影されている。グレーテにも。3幕で彼女は元恋人の作品に自分自身が描かれていることを知り、彼にまた会いたいと思った。それが最後のシーンにつながる。Loyがその録音がなければこのオペラをやることはなかったと言った、1948年のフランクフルトラジオの録音、たしかにソプラノとテノールがめちゃうまい。二人とも澄んだ声で。
このオペラを見た直後は微妙な感じだったが、結局、ずっとこのオペラのことを考えている。