2018.2.20: Jake Heggie "Dead Man Walking"

舞台にはオーケストラがぎっしり。若い男女が駆け込んできてたわむれる。下着みたいな薄着。そこへ二人の屈強な男がきて、女を押し倒し、男を殴りつける。女は悲鳴をあげ、一人目の男から逃れたが、すぐに次の男に長椅子の影に押し倒される。もう一人の男は若い男すら犯しているようにみえる。。。上手からJoyceが登場して歌う。でもこの人物シスター・ヘレンは実際には現場にいない。

場面かわって、子供達が大勢現れ、黒人の太ったシスター・ローズが仕切って合唱、集まって歌おうとかいう、とてもキャッチーなメロディの曲。黒人女の歌い方はオケラではないが声量はJoyceより上。

ヘレンはある男から手紙をもらい、シスター・ローズが止めるのもきかず、長距離運転をして会いに行く。これは私の巡礼の旅だとか言って。ここのアリアはオペラっぽくてよかった。

途中、スピード違反で警察につかまるが、シスターだと告げると、母のために祈ってくれと言われて解放される。そんなのあり?

着いた先は刑務所。そこの司祭は事務的な人で、囚人 Joseph De Rocher には全く慕われていない。彼が唯一、心を開くのがシスター・ヘレンだった。。。

舞台には長椅子が数台あり、監守たちが動かして舞台を上手と下手に分け、ヘレンとJosephが対峙する。この構図が繰り返し行われる。

ヘレンがJoseph De Rocherの家族、母親と二人の弟と対面。ピンクのカーデガンを羽織った、いかにも頭の悪そうな太った母は、あの子はいいのなのとダメな母親丸出し。

裁判所で、ヘレンと家族は、スーツ姿の二組の遺族とも対面。遺族は対照的に裕福そうで社会的地位もありそうだが、女の子の両親は離婚していた。男の子の父親だけは穏健だが、他はヘレンを敵視している。こんな簡単な議論により、長らく収監されていた死刑囚の執行が決定する。アメリカの制度ってなあ。

休憩。前半が終わった時点で、後半の期待感に震える。こんな感覚は久しぶりだ!コーヒーを買うのに並んでる時もしらないおじさんが熱く語りかけてきた。震えているのは私だけではない。

夜、死刑執行の決まったJosephが腕立て伏せをしてまだ体を鍛えているのが切ない。あの女の子が悲鳴さえあげなければ、と人のせいにしているのが完全に殺人犯だ。Dead Man Walkingの歌はここ。

上手半分にはヘレンが白い寝間着で横たわっている。眠れず、ローズに怒られる。他の子供に何かを伝えてと頼むが、こんな夜中にはやらんが明日やるとか言われてる。

翌朝、ヘレンがJosephに会いに行く。彼はまだ殺人を認めていない。Josephの家族がきて、弟たちが結婚が決まったといい、現実を見られない母はJosephが何かを言いかけても聞こうとせず、ヘレンに家族写真を撮ってもらう。

最後にヘレンが二人きりでJosephと対面。ヘレンは子供の頃、ラスベガスに言ってプレスリーに会った話をし、Josephが喜んで二人でプレスリーの歌を歌う。名場面だった。。。これで心を開いたJosephは、ついにヘレンの赦しを求め、彼女もそれを与えるのだった。。。

看守がきて、Josephを十字にしばる。上手で遺族の家族が見守っている。Josephは、罪を悔い、自分の死で遺族に少しでも安らぎが訪れることを願う。ヘレンの赦しにより、ここまで理解したのだなあと感慨深い。機械音が数度なって彼は死亡。

最初に子供達が歌っていた明るいメロディで幕を閉じる。

ヘレンの自伝を元にした物語が素晴らしいし、それをオペラにのせた構成が秀逸、semi-stageとうったったシンプルな演出がかえってよかった。現代のポップ音楽とまぜこぜの音楽も悪くなかった。Jake Heggie(1961)作。

現代オペラでは2番目の秀作に出会えてしあわせ。アメリカでは2000年の初演から物議をかもしたらしいが、今回がイギリス初演でたった一日のバービカンでのコンサート形式。もったいない。見られて本当にラッキーだった。

STAFF & CAST


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