現代のオペラはまさに演出家の時代。本作のMartin Lloyd-Evansをみるのは4作目、すべてHalland Park。野外劇場にテントを張っただけのこの小さな舞台に置けるセットは限られている。歌手の声だってろくに響かない。そこにシンプルだが作り込んだの舞台ときめ細かい演出で、人間ドラマを作り上げる。役者の動きも表情も音楽とぴったり。
舞台はコンクリートの塔、上手から下手に通路があり、上手側の側面のドアに続き、下手側の側面には階段があり、中央上空の踊り場も舞台もなる。登場人物の閉塞感をよく表している。通路には細い棒が何本も立ってられていて、盲目の老王が一人で歩いていても違和感がない。
老王が家来と話す。40年前にこの花咲き乱れるイタリアを征服した。
若い姫(太いけど)が若いテノール(これも太い)と浮気をしている。狭い通路に転がって抱き合う。が、人の来る気配に男は逃げる。
来たのは老王で、盲目ゆえに勘が鋭く、誰といたと問いただす。姫は嘘ついて老王に触ろうとするが、拒絶されて若干逆ギレ。ドアから塔に消える。
若いバリトンが戦果をあげてきて、父である老王に褒美を求める。姫と結婚することになったらしい。あれ、最初から結婚してたのかな。征服された国の姫で、最初から老王を父と呼んでいた。
間奏のち二幕。バリトンが妻に、また出征するが、出発の時に塔にあがってヴェールをふってほしいと頼む。最初はつれない妻だったが、愛の歌がきいたのか、塔の階段をあがる。女中がもってきた白いヴェールを投げる。長っ!下に降りた女中と二人で広げてヒラヒラ〜
テノールがやってきて、老王の家来と同じ服装で潜伏していたと、自分のことを愛してないのかと。ヴェールを触るなと一度は断った姫であったが、愛の歌がきいたのか、ヴェール触るのを許してしまう。すかさず階段をあがって抱きしめるテノールくん。上空の踊り場での二人の合唱は、太い二人ではあったが、美しかった〜
そこへまた老王がきたので、テノールは慌てて逃げる。また姫を問いただす。今度は姫もキレて、逢い引きしてたさ、「若い死」と!
弦楽器をはじく音が淡々と続く中、怒った老王が姫の首を一気に絞めて殺してしまった。物語しらなかったので超どきどきした。
でかけたはずのバリトンが戻ってきて(塔のヴェールがみえなくなったから)、事態をしる。老王は首に自分の指跡がついているだろう、間男を捜して復讐すると歌い、上手の通路から去る。
下手からテノールくんが戻ってくる。姫の死体をみつけて嘆き、黒い布をもって塔にあがり、また女中と二人で広げてヒラヒラ〜。さっきの白との対比がいい。
それと同時に数人の男達がでてきて、姫の死体を動かす。黒布がいいめくらましになっていた。
さらに下手から民衆がててきて、姫をキャッチャーにのせイタリア国旗をかぶせる。舞台はいつのまにか教会の納骨堂。民衆が姫の遺体をみて嘆く。女と盲目の男が歌う。声をあげて嘆いていたが、舞台裏から合唱がきこえてきて、ここは教会だといさめ合う。もう遅いから帰ろう。
みなが帰った跡、テノールがやってきて、死体に口づけをする。バリトンがやってきて、老王が、死体の唇には猛毒が塗ったのだと。ふらつくテノールにバリトンが、どうしても聞きたいことがある、彼女はお前を愛していたのかと。倒れたテノールは、バリトンに抱かれながら、復讐したいなら急げと言って絶命。その後バリトンも死体に口づけをして、猛毒を受け、絶命。
老王がやってきて驚くもつかの間、民衆に引き立てられて、塔にあげられ、バン!と銃殺されてしまったーーー!!!
口あんぐりあけてしばらく動けなかった。2007年の再演らしい、空席が目立ったのがもったいない。
歌手もみなよかった。ソプラノは前半は声がでてなかったが、後半はよかった。男三人は割と安定してる。テノールは低めの時の声量がちと物足りないが。演奏もよかったと思う。
この作曲家、ポスト・ヴェルディの一人で、イタリアオペラのドラマとワーグナーの叙情性を融合させたといわれるらしい。納得。唯一有名なのがこのオペラ。