舞台はロマネスクな口が七つ開いた灰色の壁。下手にテント、上手に荷物。中央には奈落が三つ空いていて、三人の人夫が出入りする。船長の妻ジョルジェッダは若い人夫ルイージと不倫している。なんかおばちゃんと話す(年寄り人夫の妻ラ・フルーゴラ)。
旦那ミケーレが帰ってきて、人夫を一人クビにするというにで、恋人でない方を勧める。酒ばかり飲んでいる奴とか。旦那は、彼は妻のことが忘れられず飲むしかないのだと。 ジョルジェッダは去年、死産したらしい。妻がつれないので、旦那は愛していないのかと問いただす。妻はテントに入って寝たふりをするが見抜かれる。 旦那が舞台に街灯を二つかざる(って掛詞か?)。煙草に火をつける。それは不倫の合図だったので、ルイージがやってくる。ミケーレは彼を殺して、上手に横たわった遺体に外套をかける。やってきた妻を突き倒し、死体に顔を押しつける。
優しく妻を抱き寄せると中に死体が〜、とかではなかった!
一幕の壁が曲がって中央が広めになっている。両脇に作業テーブル。修道女たちがわらわら出てきて歌いながら洗濯物を畳んだり。院長たちは偉そうで、口答えした修道女の髪をひっつかんで頬を平手打ち。
そこへ訪問者がやってくる。修道女たちが期待を寄せて車の色とかきく中、アンジェリカの名が呼ばれる。修道女たちが上手に椅子と机と衝立を並べて応接室の出来上がり。
七年ぶりにやって来た臙脂色のスーツを着た彼女の叔母、アンジェリカの両親が死んだ後に一切を任されたが、財産分与の書類を公正に作ったのでサインしろと。アンジェリカの妹が結婚すると、喜ぶが、全財産譲るのだと。
アンジェリカが生後すぐ別れた息子のことを尋ねると、二年前に病死したと。叔母の足にしがみついて号泣するアンジェリカを引き離し、院長たちが机に座らせてサインをさせる。
みないったん上手に退場して、間奏曲。美しい。
またみながぞろぞろ出てきて下手に移動。アンジェリカが一人残り、花壇の奥から薬を取り出す。箱をテーブル代わりに調合して飲んでしまう。が、自分が自殺の罪を犯したことに気づき、慌てて許しを乞う。が、身もだえしながら絶命。
子供を抱いた聖母が現れ幸福に包まれながら〜、とかではなかった!
パリでよかったと噂のソプラノAnne Sophie Duprels、たしかによかった!歌そのものよりも感情表現が。小柄で見栄えもよくないのだが。要チェック。
衣装も同じだが、リヌッチョは軍服だったかなあ。このリヌッチョのマッチョな軍人設定が敗因。歌もよくないし。前回は韓国人テノールがよかった。
ラウレッタも歌よくない。なので二つの名アリアは残念。ジャンニ・スキッキの歌はよかったが、言動がイタリア人ぽくない。
全体的に毒がききすぎてていまいち笑えなかった。韓国人テノールだったらよかったのに。
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大衆芸能プッチーニであるが、この三部作には才能を称賛せずにはいられない。全く暗い愛憎悲劇、女だけの宗教劇、ロッシーニばりの大合唱喜劇。場所も登場人物も全く異なる三つの物語は「子供を失う」「財産想像」のキーワードでそれぞれつながるにすぎない。でも全体として、人間ドラマの多様性をみせつける。
元々の脚本からさらに救いをはぎとった1幕、2幕の演出は見事だが、3幕の毒はききすぎ、ここは底抜けに明るくしてくれないと、全体として引き立たない。
とはいえ、Holland Parkの演劇的演出は好きだー!