開演前から舞台は三段にわかれ、各段で芝居が始まっている。上階に地位の高そうなスーツ姿の男が椅子に座る。中段は会議室で、青い作業着姿の黒人男が掃除をしている。床や机にはわざわざ埃が積もっていて、それを丁寧に拭き取り、椅子を並べる。下段は群衆、ばらばらに到着し、席につく。
最初の曲は最上階の男はカウンターテナーで、口笛もやる。中断の黒人バリトンもまあまあ。下段では、レズカップルの一人がスーツに着替えて出勤、シングルマザーが暴れる子供をベビーシッターに預けて出勤、倦怠期の中年夫婦は文句いう妻から逃げるように夫が出勤、あと独身の若い男。
まずシングルマザーが中段に出勤、運動靴で来てからハイヒールに履き替える。彼女が仕切る会議に他の人々もやってくる。会場は高層ビルのガラス張りの部屋で、若いレズ女はこんなとこきたことないと緊張気味。若い男が怖くて見られないとか。背景に降雨ビルからの眺めが映し出される。
会議が始まる前に揺れが起こり、真っ暗になる。飛行機がビルに墜落した。続いて、白い紙が天井から一斉にふって反対側のビルが倒壊。このへんの表現はシンプルで非常によかった。
みなまず携帯で外部と接触を試みる。シングルマザーは今日に限って携帯を忘れたと半狂乱になる。他の人々は愛する人と電話がつながりながらも、助けてくれとは言えない。若い男は留守電にメッセージを残す。中年男の妻は出かけていてつながらない。やがて携帯はつながらなくなる。
パソコンを運んで電話をつなぐ。シングルマザーが真っ先にかける。ベビーシッターは親戚が何かで、息子のことを託す。それもやがてつながらなくなる。
若い男の母は庭で花を生けていたが留守電をきいて青ざめる。
会議室は閉じ込められ、ガラスを割ろうとか割るなとか。黒人男に率いられレズ女と中年男が脱出を試みる。シングルマザーと若い男は残り、少し心を通わせる。下段では捜索隊が生存者を捜しているが、会議室には気づかない。
上階の男は吊されて天井へきえる。天井から男が落ちてきて下段の女と踊る。死者のイメージか。
会議室には煙がきたのか、黒人男がコートをぬらしてドアの下につめる。みな机に立ち上がり、硝子窓から助けを求める。
ここで幕。はーーーっ。1時間半、長くはなかった。音楽はノイズなので、オペラというより演劇としてよかった。事件の背景とか最上階の男の意味とか、もうちょっとつっこんでよかったかもしれないが。あの日にあそこで人々の生活が消えたことを淡々と伝えたのもよかったかもしれない。多くのよい戦争ドラマがそうであるように。
英語歌いの字幕なしなので物語の細部はわからず。