2013.8.13: Rossini "Il viaggio a Reims" ランスへの旅

開演前から舞台には白いリクライニングチェアが十数台ずつずらりと並んでいる。開演してもそれだけ!舞台の上に白い木でバルコニーが作られているが、床下を使うことはない。

背景は濃い青から、途中で淡い水色と白のグラデーションになり、終盤はまた濃い青、一日の時間の流れを表しているのであろう。

下手から、体操服みたいな真っ白のTシャツに白いズボンを着た、太めでツインテールのマッダレーナ、ホテル「黄金の百合」の女中頭のはず。。。

同じく下手から数人ぞろぞろと出てくるのだが、みんな真っ白。上手隅からサイドテーブルを取ってきて、下手からコップやリンゴを回して、リクライニングチェアに座る。首に聴診器かけてるのがホテルの医者ドン・プルデンツィオ。ボーイ長アントニオもいるはず。太めでロン毛のゲイはなんだ(最初だけで後は髪を結んで別役)。

最初、病院で看護婦と患者の設定なのかと思ったが、よく見ると背後に浮き輪がかかっているので、船の甲板か!

上手から出てきたコルテーゼ夫人、チェアに座って真っ赤なネイルをする。コロラトゥーラがめちゃ綺麗!細めの声だが丁寧で私好み。Valentina Teresa Mastrangelo、スペイン人か(29歳イタリア人だった)、濃いめの顔に黒髪、細い体も素敵だ。

体操服は従業員で、コルテーゼ夫人の背後に集まってシャボン玉をふくのが綺麗。コルテーゼ夫人がVIP客対応のカツを入れる。

この後、客人が次々と出てくるのだが、みんなバスローブでこれまた真っ白。各国の身分の高い客人が一堂に会するのは、フランス王の戴冠式があるから。この設定がまずうまい!

下手から、バスローブで頭にタオルを巻いたフランスのフォルヌヴィル伯爵夫人が登場。従弟ルィジーノに、事故で衣装がだめになったと言われて失神するが、帽子がひとつ残ったと聞いて喜ぶイタイおばちゃん。

その召使いモデスティーナ役を一瞬やってた従業員は日本人歌手。演技がわざとらしく、超日本的な不細工な顔に全く似合ってなくて、見ていてこっちが恥ずかしい。こんなの見ていたら、オペラ好きになんか絶対にならないだろうなあ。。。

次はイタリアの将軍の未亡人でポーランド出身のメリベーア侯爵夫人。スペインの提督ドン・アルヴァーロと一緒にきたのだが、ロシアのリーベンスコフ伯爵と三角関係。

チェアに座らせてマッサージするも、喧嘩が始まりそうになるが、ハープの音が正面の客席から聞こえてくる。ローマの女流詩人コリンナもその隣で歌う。これでみんな静まる。飲んでいた赤いジュースを持って、コルテーゼ夫人を残し退場。

詩人と実は両思いなのがイギリスのシドニー卿。コルテーゼ夫人はじめ従業員たちがハートの台に詩人の顔写真を貼ったものをチェアにのせて、赤い花びらをまいて歌う。コルテーゼ夫人が一人残り、同じ花びらをシドニー卿にも撒いて起こす。

コリンナがパックしながら横たわっていると、エロ騎士ベルフィオールがやってくる。バスローブを脱いでトランクス一丁になって誘惑するも、コリンナに下着きてたのにバスローブはだけるという逆エロ攻撃されて退散。

初日はここで事故が。赤いジュースの入ったグラス、コルテーゼ夫人の分だけがサイドテーブルに残っていたのだが、バスローブがあたって落ちて割れた。次のシーンで出てきたドン・プロフォンドが、おもむろに箒もってきてはいて片付けてた。ナイス・カバー。

ドン・プロフォンドは骨董マニアで、どこかに電話して、登場人物達のお宝目録を作っていた、はず。キャラに合わせた演技が非常によくて大爆笑もらってた。Sergio Vitale、いいバスだ。

どこかでコルテーゼ夫人が赤い毛糸で編み物していて、誰か男が毛玉をもっていた。誰だったんだろう。。。後で結ばれる人の暗示だったのか?

その後、悪い知らせが入る。トロムボノク男爵曰く、ランス行きの馬を確保できず、戴冠式に行けないと。全員が落胆するも、コルテーゼ夫人が国王はパリでもパーティをやると言い、フォルヌヴィル夫人がパリならうちに泊まれと言う。みんな一転して大喜び。ランス行きの資金はここでパーティやって、残りは寄付することに。と、あらすじにはいろいろ書いてあるが、実際のテンポは非常によくて、落胆から歓喜までが早かった。

従業員たちが衣装を運んできて、客人とコルテーゼ夫人も舞台で歌いながら着替える!男は半裸になってそのまま、女はタオルで互いに隠し合い。コルテーゼ夫人は生着替え中にコロラトゥーラ!男はスーツで女はドレス、みんな違う衣装。自前か?

休憩。戻ると舞台の印象は白と青で同じだが、普通の白い椅子が並び、一本の電飾が舞台を横切って垂れ下がっている。

メリベーア夫人とリーベンスコフ伯爵が二人で言い合いしていたのだが、なにがどうして、お互いの良さを再確認し、結婚することとなった。

みんな出てきて座り、シャンパンが配られる。従業員たちもドレスに着替えている。日本人女の頭がへん。演出だから仕方ないとして、ヒールの高さにどんびき。カメラ持って写真とりまくるキャラだし。。。

ていうか、カップルがなんか数組いるんですが!誰と誰ができたんだ!?

トロムボノク男爵がなんか仕切って歌合戦をやることに。なるほど、ドイツ人だったのか。中央の小さな台にのってドイツ国家を歌う。

メリベーア夫人(胸元ざっくりあいた長めのドレス)が歌ってリーベンスコフ伯爵(水色のたすきがけ)が間の手を入れる。

ドン・アルヴァーロ(黒シャツ&黒スーツ)は扇子もってスペイン風の踊りを一人で。初日は日本人歌手がやったのだが、めちゃくちゃ下手だった。背が低く小太りで不細工のひげ面で演技も踊りも下手。こんなの見ていたら、オペラ好きになんか。。。

シドニー卿、イギリス人は歌なんか歌えないよ!と言ってたのに(推定)、God Save the Queenを歌う(笑)。

フォルヌヴィル伯爵夫人(初日は黒ラメドレス、二日目はシンプルなロング)はエロ騎士ベルフィオールと。エロ騎士は元々彼女の信奉者だったのが、コリンナにちょっかい出してて、それを知って女二人は中が悪いっぽい。そういえばところどころ、歌でもかぶせあっていた。

コルテーゼ夫人(片方だけ肩ありの膝丈ドレス)が膝の上に座ったりしてるんだが、ドン・プロフォンドと?、いつの間に!

最後はコリンナに歌ってもらうことに。トロムボノク男爵の仕切りで、テーマをイタリアの歴史から投票して、一人一人なんか言いながら帽子に紙切れを入れていく。

今度は下手前方の客席にハープがあり、コリンナはそのそばに行って歌う。

最後はみんなで合唱、じゃなくて多重唱。それぞれが違う旋律をしっかり歌って、合わさったり、引き立ったりする音が美しい。これぞロッシーニ先生の真骨頂!

「ランスへの旅」は、一番いいかどうかはともかく、一番楽しいオペラかもしれない。キャラそれぞれの物語にお国柄が出ていて、そうやって見ていくと二幕の国歌が熱い。

ロッシーニ・フェスティバルでは、この演目は若手公演としてほぼ毎年やっている。FlorezもOlgaちゃんもこれ出身。今日の歌手もうまいのは数年後にはタイトル・ロールで帰ってくる。そんな成長を目撃できるのも、このフェスティバルの面白さ。ということは今年初めて知った。いい仕事してるよなあ。

歌手、男性陣は、初日はひどかったが二日目は二人のテノールがまとも。リーベンスコフ伯爵は最後に歌いまくる役なのに(Florezもやった,1999)、初日は死ぬほど下手で、二日目はモーツァルトのドリーミング・ボイス、怒る役なのに。エロ騎士ベルフィオールは、初日は脱いだ時の体で選ばれたのかって感じだったが、二日目はラテン系でまあまあ歌えてた。バリトンは上手いのがいなかった。ドン・アルヴァーロは日本人と黒人系のダブルキャストで下手、存在感なし。二人とも歌わない日はボーイ長アントニオ。

女性陣は、初日はみなよかったのに二日目はちょっと落ちていた。一番アリアが長いのはコリンナで、初日はそこそこ、二日目の方がよかった、高音で顔を歪めてて苦しそうだが。次はフォルヌヴィル伯爵夫人(Olgaちゃんはこの二役をやってた,2002)、初日の人が非常によかったのに、二日目は全然下手。初日のコリンナと二日目のフォルヌヴィルは歌わない日は従業員やってた。ハートもって歌う合唱がクオリティ高いのはそのせい。メゾのメリベーア侯爵夫人は両日とも似てたが、初日の方がちょっと迫力あったかな。

みんなアリアあって豪華競演なのに、歌合戦でなくちゃんと物語になっている。ロッシーニは偉大。

STAFF & CAST


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