2012.10.4: Wagner "Die Walkuere"

1幕。出だしの音楽がシャープで素晴らしかった。その後の悲劇が予感される。ミュンヘンのMehta指揮は勢いあって大好きだったけど、演奏はここまでシャープじゃなかった。ロイヤルの音楽監督Pappanoさんは割と好き。たまに溜めすぎで早く振ってーと思うけど、その分、盛り上がるところでやっぱり正しかったんだと思う。

序夜に続いて舞台は暗い。中央に赤く照らされた部屋が浮いていて、その回りを木の枝のようなリングが螺旋を描いている。上手にテーブル、下手にソファー、序夜の神々の家にあったのと同じセット。

Sieglinde の家に生き別れになった双子の兄 Siegmund がやってきて、下手のテーブルの飲み物を奪う。Sieglinde が出てきて驚き、また飲み物をもってきて、毒味させられて、おそるおそる話し始める。歌は Siegmund(Simon O'Neill)はまあまあ、Sieglinde(Eva-Maria Westbroek)はかなりいい。

Sieglinde の夫 Hunding が帰宅。これが名優Sir Tomlinsonだったもんで、その一挙手一投足に釘付け。バンと振り降ろす斧の音も絶妙。Sieglinde を横暴に扱い、飲み物を持ってこさせたのに、あっさり薬をもられて寝てしまう。

SieglindeSiegmund は赤い部屋にあがって素性を明かし、愛をはぐくむ。とりたてて抱き合ったりはせず。ミュンヘンの時は思いっきり抱き合ってごろごろしてたよなあ……

木の枝のリングの一部が照らし出されると神の剣が!その後、木の枝のリングはLEDライトで緑色に照らし出され、徐々に青色に変わっていった。Siegmund は神の子なので剣を抜くことができる。英語字幕だと意味がわかっていいなあ。Sieglinde は訪れる男たちに剣を抜け抜けと言ってきたが誰も抜けなかったと。そんなあばずれだったのか!

最後に赤い部屋が上空にあがると、その下に序夜ででてきた捨てられた本の山があった。

うーむ、このリングの演出は「LED演出」と名付けよう。序夜もだが、舞台が暗くて色がない、色といえばLEDの人工的な光のみ。

2幕はWotan祭り。今回のキャストの目玉Bryn Terfelがこのリングの主役。

舞台は1幕と同じで赤い部屋があがっただけ。序夜の神々の家が荒廃した姿。柱とか棚とか倒れてるし。木のリングと、中央に本の山は残り、序夜で金塊をぶら下げてた赤い紐が垂れ下がっている。下手の梯子から Bruennhilde が降りてくる。立ち止まって、有名なワルキューレのテーマ!

・・・歌えてない。出だしの声量はよかったが、伸ばす所で止まってしまう大失態。その後も声量だけでめちゃ雑。ああ、なぜこんな歌手がロイヤルに・・・しかも演技も最悪。チビのデブで黒いドレスに槍もって、ふらふらもたもた歩いてて、全然芝居してないし。

Susan Bullock (1958 英)、リングは2007年に東京で初めて歌ってるらしい。

悪妻Fricka(Sarah Connolly)はいいので、最初の夫妻の口論は非常によかった。言ってることは滅茶苦茶だが。これ、ドイツ人だったら、奥さんあんなに怒ってるんだから言うこと聞かないといけないよな、って普通に思うのかなあ。ま、自分も浮気しまくりだし。色がないと思ってたら、Fricka は赤いドレス着ててこの演出で初めてLEDでない色を見たような。

Frickaと入れ替えに奥からやってきたBruennhildeの苦悩を打ち明けられる。ここは序夜の復習なのでいつも飽きちゃうんだが、Terfelが苦悩全開なので、面白かった。ただ舞台セットが全く動かないので、二人が歌ってないところは退屈で、溜めないで早く振ってくれーとPappanoさんを双眼鏡で見ていた。

Wotanが光で照らされた梯子をばっさり切り落としたのだけが仕掛けといえば仕掛け。

後半。下手のソファーが倒れて岩陰を表現し、奥から赤い紐がのびてつながっている。それをつたって SieglindeSiegmund がやってくる。Sieglinde は今更ながら近親相姦なのを悩んでいる。

二人が森の中で離ればなれになり、Siegmund がソファーの陰で寝てしまうと、Bruennhilde がやってきて、ふらふら動くなとでも言われたのか、槍もって仁王立ち。早くHunding 来ないかなあ。わくわく。

どこから来るのかと思っていたら、上手の中空から出てきた!降りてきてからも、ピタッと動いて止まって、物語が動き出す。WotanSiegmund の剣を叩き壊したところで殺す。直後、Wotanの槍に突かれて、よろめいて下手のベストポジションに移動したのに倒れ伏す。

2回目の幕間が80分だったので、ロイヤルのレストラン・デビューをした。3軒あって、上級の二つは満席だったが、最上階のレストランに予約なしで入れた。結構おいしかった〜。

3幕。出だしの音楽も素晴らしい。ワルキューレたちにも異様に上手い歌手がいて、レベルが高かった。長女を除いて。

中央に白い大きい壁がある。ワルキューレたちはその前で馬の頭の骨を掲げながらちょっと踊る。BruennhildeSieglinde を連れて Siegmund の遺体をマットレスに乗せてやってきて、助けを求める。父Wotan もやってきて、壁がぐるっと回って、壁の一部が開いて、Bruennhilde は反対側に追いやられる。マットレスは片付けられた。

大きな壁の真ん前で Wotan が高らかに歌う。Bruennhilde も脇に立ってるがどうでもいい。岩山に閉じ込めて、最初に出会った人間の男の奴隷になれと。チブデブ娘は強い人じゃなきゃイヤとかほざく。

Bruennhilde が壁の奥に追いやられて、このまま終わってしまうのかと心配になったら、木のリングがぼーっと燃えた!キタキターこれを待っていた!Wotan は小さなかがり火も手に持って去る。壁があがると Bruennhilde が例の黒いソファーで寝ている。

ここの最後の仕掛け、初日とは少し違ったらしい。装置がうまく動かなかったのか?この演出、装置が動く仕掛けは全幕で入れてくるようだ。

STAFF & CAST


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