2012.3.24: Tschaikowsky "Evgeny Onegin"

オペラは歌手の時代から指揮者の時代になり、今は演出家の時代らしい。だから私は一番いい時期にオペラを見ているのかな。NYとかロンドンはまだ歌手の時代を続けている感じだが、ヨーロッパ各地やイギリスの地方都市の二番手のオペラ座は、次々と新しい演出を繰り出している。ここミュンヘンもそう。

シャンデリアの輝くロビーに人気がなくなったので早めに客席に入ってみると、もう舞台は開いている。透明なアクリル板で舞台が上から下まで1/3に仕切られている。上手2/3にはカラフルなソファーが並び、下手1/3にはビリヤード台、下手端のアクリル壁には流線型の模様がほどこされている。舞台奥もアクリル板で、窓の向こうに雪を少しかぶった山と空が描かれている。この資材に糸目をつけない感じがさすがミュンヘン。

色とりどりの衣装をきた役者たちがぞろぞろ出てきて、下手と中央のアクリル壁よりに立つ。ソファーには女性が数人。ソファーの脇には白黒テレビがあり、フィギュアスケートの映像が流されている。BGMにクラシック音楽がかかっている。まだ演奏は始まっていないし、指揮者もいない。

うわー、これから何が始まるんだろう。このドキドキした高揚感。久しぶりに味わう。

指揮者が出てきて音楽が始まる。上手から若い女が二人、マイクスタンドを持ってでてきて、踊ってアリアを歌う!黄緑のドレスの金髪アルトが妹オリガ、ジーンズに黄シャツの茶髪ソプラノが姉タチヤーナ

・・・ここでいい演出がくると涙ダラダラ〜なんだがなあ。Jonathan Miller が95年に使った演出だ。しかもださい。Christof Loy ならこんなことは絶対にしない。

下手に新たな男性客が二人やってくる。双眼鏡を向けると、Simon Keenlyside!よかった〜、出てくれた〜。ウィーンのマクベス、ロンドンのフィガロ、その他コンサートと、ここ最近キャンセル続き。空色のジャケットにオレンジのひらひらシャツがお似合いです♪

これが本日の主役エウゲニー・オネーギン、ピンクと水色の花束をオリガに渡す。一緒に来た黒スーツがレンスキーオリガの婚約者で、ラーリナ夫人一家に紹介される。タチヤーナオネーギンに一目惚れ。

2場、少し明転。みなが帰ると舞台も下手に移動して、上手の部屋だけになる。タチヤーナ乳母に一目惚れを告白。おもむろに服をぬぎすて、下着姿になって、床で寝る。背景の山が照明で照らされて、夜から朝になった。

朝、タチヤーナは、オレンジジュースを持ってきた乳母に手紙を書いたから彼に渡してくれと頼み、服を着る。

女性たちが十数人出てきて、中央のタチヤーナとともに舞台前面に並ぶ。上からバーが降りてきて、つるされるのかと思ったら、ちがった。カウンターを表現してただけっぽい。

ふつーのスーツに着替えたオネーギンがやってきて、自分は結婚する気はないが、兄のように愛すと告げる。タチヤーナふられた。

3場。また客人がわらわら入ってきて、タチヤーナに白っぽいワンピースを着せる。彼女の命名日を祝う舞踏会が始まる。Keenlysideは舞台後方のジュークボックスなんぞ眺めて、所在なさげ。帰ろうとするが、やってきたレンスキーに引き留められる。

タチヤーナが客人に次々と挨拶していくと、レンスキーオネーギンの順番が近づく。ドキドキ。ちょうど蝋燭のついたケーキが出てきて、男二人が吹き消す。

下手側にオレンジの椅子が次々と並べられ、客人たちが席につく。オネーギンタチヤーナと、レンスキーオリガと踊る。初・Keenlysideの社交ダンス!!

でも客人たちがオネーギンを不作法な自由主義者だと噂するので、オネーギンオリガと踊り出す。まんざらでもないオリガに、レンスキーが嫉妬の炎をメラメラと燃やす。

上手でショーが続く。フランス人家庭教師がタチヤーナに讃歌を贈る。数人の男が出てきて、次々と服をぬぎ、ほっそい下着一枚にになって踊る。あれ、これってそういう作品・・・?

そうこうする間にレンスキーがキレてオネーギンに絶交だ!決闘だ!きたー、と思う間もなく暗転、休憩。

席に戻ると、さっきの広間の中央にでっかいダブルベット。。。なにこれ。。。誰と誰が。。。回りの二脚の椅子には男物のシャツがかかっている。。。

4場、数人の半裸の男たちが舞台面に並び、あがるバーとともに少し吊されておりる。あれー、まさかそういう設定?いくらチャイコフスキーだからって。。。

でてきてベットに横たわったのはレンスキーオネーギンオネーギンレンスキーの頬に手をかけたところで、介添人が出てくる。ベット後方の椅子のシャツの主はこの人。おもむろに枕の上に銃を置く。

レンスキーがなんか歌ってる間にオネーギンが銃とってバーン。撃ってもうた、殺してもうた。レンスキーがベットに倒れふすと、また数人の半裸の男たちが躍り出てきて、レンスキーの死体をシーツにくるんで引きずり出す。

椅子に座り込んだオネーギンの前で、男たちが次々とベットに積み重なって官能ダンス。えっと、オネーギンの病んだ心の妄想ってことすか?

5場。さすらいの旅に出ていたオネーギンが、ペテルスブルクでタチヤーナに再会する。胸元のあいた臙脂色のドレスに白の毛の短いジャケット。その夫となったグレーミン公爵が愛を歌う。介添人と同じ歌手だ。

今度は、えろ美しくなったタチヤーナオネーギンが一目惚れ。なんやかんや歌って、タチヤーナも今でも好きとか言って、二人でベッドに横たわる。が、オネーギンが触れようとした瞬間にタチヤーナは起き上がる。

オネーギンは土下座して愛を乞うが叶わず、ジ・エンド。女たちがわらわら出てきて、また妄想表現。みながいなくなった後、オネーギンは一人で舞台後方に立ち尽くす。

終わったタイミングが測りにくくて、拍手がまばら。カーテンコールも一回と少なかった。あれー、よかったけどなあ、すごく。Keenlysideの声量とか迫力がいつもより足りなかったのは確かだが。芝居はいつも通り素晴らしく、演出的にも萌えー、だった。

出待ちの人数はいつもよりも多かったから、Keenlysideファンも増えたかも。本人もいつもよりはご機嫌だった。相変わらず、人の顔みないで流れ作業的にサインしたり、態度はいまいちなんだが。

STAFF & CAST


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