このためだけにバルセロナ遠征。ドニゼッティの「シャモニーのリンダ」、ちょっと珍しいプログラム。
私のお気に入りのペルー人、Juan Diego Florezは現代最高のテノールだと思う。クーラとか目じゃない。
とくに2幕のアリア、スコーンとのびる高音で、一度とめて長めにためて、またドカーンと高音。涙だらだら〜。「あーいー!」って言ってた!
まだ幕の途中だというのに、ものすごいスタンディング・オベーションが三分くらい続いた。 もうその後はあの声を聞くだけで泣きそう。
ソプラノはミュンヘン出身で何度が見たDiana Damrau、前は声が細かったが、だいぶ太って声量も増えてた。他の歌手もみなよし、演奏も舞台も演出もよし。
* * *
序奏に続いて、村人たちの合唱から幕があがる。
1幕は白い木がならんで、サグラダ・ファミリアの内部みたい。リンダの両親アントーニオとマッダレーナが小作契約を延長できないかと話している。そこへ黒い車でボアフレリー侯爵が乗りつけ、リンダはどこだと聞くが、いないので帰る。小作契約は延長してくれるらしい。
入れ違いで白っぽいドレスのリンダがやってきて、アリア「この心の光」がコロラトゥーラ満載。Diana Damrauの出来はまあまあ。
「リンダ!リーンダ!」とカルロがやってきたー。薄茶色のスーツに黒い長いブーツがすらっとしてる。リンダと抱き合って甘々に歌う「君の微笑み」。このへんはまだ難しくないのか余裕たっぷり。
両親と神父さんみたいな人がきて、リンダはボアフレリー侯爵に狙われていると話す。スーツケースを持った旅芸人ピエロットがなんかやって歌うがいまいち。リンダはピエロットに付き添われて村を出ることになり、みなで立って並んで重々しく歌う。
ここまでは少し退屈だったががんばった。
2幕は白い家。上手から下手に階段が斜めに横切る。黒い手すりの装飾がいい。階段の上にはドアがひとつ、階下にはテーブルとソファー。このセットで目が覚める。実はカルロは伯爵なのだ。家にいるのは銀色っぽいドレスのリンダのみ。
ピエロットがやってきて再会を喜ぶ。ピエロットはパリで病気になって別れてしまったらしい。リンダはカルロに再会して転がり込んだ。ピエロットは去る。
ボアフレリー侯爵がやってきて驚き、妾になれとくどく。リンダが断るとなんか投げつけて帰っていった。
入れ違いにカルロ〜。灰色っぽいスーツ。いきなり甘々に歌う。母から縁談が来てるらしいが、一言も言わずに愛だけ歌って去る。ここのアリアで涙だらだら〜。
父アントーニオがやってきて、リンダが伯爵の妾になっていると勘違いしてなじる。またピエロットがやってきて、カルロの縁談をばらす。リンダは度重なるショックで階段の上へ。
カルロがやってくると、服をはだけたリンダが階段の上からずるずると降りてくる。錯乱。ピエロットが村に連れ帰る。
この幕は字幕を追わなくても意味がわかって非常に楽しかった。
3幕。下手寄りに細長い木のテーブルと椅子たくさん。神父さんがきて、カルロがやってきて、人生相談。母から結婚の許しが出たのだが。
村人がわらわら出てきて座り、ボアフレリー侯爵とパーティする。女たちがボアフレリー侯爵に椅子を譲ったあと二人で一つに椅子に座ったり。アジア系の男女カップルも一組いる。ボアフレリー侯爵のコミカルな演技がいい。
そこへ錯乱したリンダがピエロットに連られてやってくる。下手奥から机の上を這って下手手前のカルロに近づく。このへんずっと下手でよく見えないのが残念。神父さんの歌もよかった。
カルロに呼びかけられて、リンダは正気に戻る。両親や村人にご挨拶。二人で結婚することとなり、みなで記念撮影して、大団円。
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終演後に出待ち。Damrauはすぐ出てきて、すごい客だったが、丁寧に対応してくれた。Florezがなかなか出てこなくて心配になったが、残ったコアファンの声援で迎えられ、王子スマイルを崩すことなく、おもむろに帰っていった。やっぱり王子だわ、この人。